【HQ!】形勢逆転【及川徹】

31話 ページ31

及「確かに、暴力はよくないよね。」

掴んでいたAちゃんの腕がピクリと揺れた。

「ならっ―ー」

Aちゃんの腕をグイッと引き、腕の中に閉じ込める。

小さな彼女の体はすっぽりと納まり、驚いたように体がはねた。

及「ただ！俺、バレーをアクセサリーだなんていう子…きらいなんだよね。」

それまで貼り付けていた笑みを一気に、剥ぎ取る。

「えっ…」

「いやっ…それは…」

俺も言葉に動揺を隠しきれない女の子たち。

及「分かったら早く俺の前から消えてくれる？」

冷めた目で見降ろせば、肩をビクッと揺らして泣きながら走り去っていく。

及「さてと…Aちゃん。大丈夫？」

少し体を離して顔を覗き込むと、彼女は戸惑ったように視線を俯かせていた。

『及川さん…どうして…』

及「えー？そりゃ彼女がいじめられてたら助けるでしょ。」

腕の中にいる彼女は俺の制服をギュッと掴むと小さく呟いた。

『ごめんなさい。』

及「それは何に対して？」

『私、本当は凄い性格悪いし、さっきかっとなって…暴力振るおうとしたし…』

及「Aちゃんが性格悪い？冗談でしょ。それに…暴力はダメだけど、俺の事かばってくれて嬉しかったよ。」

『でもっ…』

及「これからは、呼び出しされたり嫌な事あったら、すぐ及川さんに報告するんだよ。助けに来るから。」

『いえ…私1人でも…』

及「ちょっとはかっこつけさせてってば！」

いつもの調子で言い返すと、彼女もまたいつものように笑った。

『あの…そろそろ離してもらえますか？』

腕の中で身じろぐ彼女を更に強く抱きしめる。

『え、ちょ…及川さん！』

及「どーしよっかなー！せっかくの初ハグなんだから、もうちょっと堪能したいなー。」

髪に顔を埋めて言えば、真っ赤になる彼女の耳。

『へっ変態！』

及「男は皆狼なんだよ。」

『やだ！サイテー！離してくださいー！』

ぎゅうぎゅうと腕を突っぱねて抵抗する彼女が面白くて、つい意地悪したくなる。

チュッと耳にクチヅケれば動きの止まる彼女。

『っっっーー！』

及「ふぐぅっ…」

声にならない声を上げたAちゃんから、鳩尾にパンチをいただいた。

俺から離れると、自身の体をギュッと抱いてこちらを睨みつけるAちゃん。

『もう！及川さんのバカ！近寄らないでくださいっ！』

ただ、彼女の顔が真っ赤で怖いどころかむしろ可愛い。

『なっ何ですかっ‼』

黙って見つめる俺にAちゃんはさらに警戒心を強めたみたいだった。

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