標的27 光 ページ32
あれからどのくらい走ったのでしょう。夜はまだまだ続いてるようです。
どこともわからない細い路地に身を滑り込ませて、しゃがみこみます。
もう足の感覚がない。息もしづらい。
左足は血濡れ、赤黒く変色していました。
ここで力尽きてしまうのでしょうか。そんな。まだAに会っていないのに死ねるわけないじゃないですか。
だからこそ、会う前に休憩をしましょう。ずっとAを探してきたんですから、少しくらい眠ってもいいでしょう?
そうして意識が黒く微睡む中、
「―――――ちょっと君！大丈夫？！」
…その甲高い声は幻聴か、はたして。
＿＿＿＿＿＿
目を覚ますと、そこは無機質なコンクリートに囲まれた4畳ほどの部屋でした。
ベッドの中でいつの間にか寝ていたようです。…ん？どういうことでしょう。私は確か撃たれて…
布団を捲って撃たれた太ももを見ると、包帯が巻かれています。それに腕には点滴も。
誰かが、手当をしてくれたのでしょう。
するとドアが開かれて、白衣を着た一人の女性が入ってきました。
「あらおはよう。どこか痛いとこある?」
「いいえ。…これはあなたが？」
「ええ。闇医者の腕で申し訳ないのだけれど。」
「どこぞの誰ともわからないのにありがとうございます。なんとお礼をすればいいのでしょう…」
「やだ気にしないで。あなたは子供なんだから。私、可哀想な子供見るとほっとけなくて…」
「…そうですか」
生まれ変わって初めて子供でよかったと思いました。
「ところであなたの名前と住所は？」
「僕はルカです。家はありません」
「え？お母さんとお父さんは？」
「……わかりません」
ぎゅうと突然彼女に抱きつかれました。
温かい体温に、少し体が固まってしまいます。
「辛いことを思い出させてごめんなさい」
「居場所がないのなら、ここにいなさい。うちは孤児を集めて一緒に暮らしているの」
「私の名前は、エレナ。あなたはもう私たちの家族よ」
その時の私は、ここが地獄とも知らず、その温もりに惑わされて首を縦に振ってしまっていたのです。
エレナが、どうしようもない善人でありながら悪人だとこの時は知る由もなかったのです。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます！とても励みになります…！ (2018年4月10日 7時) (
レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです！自分のペースで更新頑張ってください！ (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2013年8月30日 0時
