標的3 始まり ページ3
私は死んだ。歩道橋から落ちて死んだ。
いや、正確にいうなら周りにだれもいなかったせいで救急車を呼ぶのが遅れ、出血多量で死んでしまった。そんなところだった。
しかし私は今見知らぬ美人な女性に抱かれ、見知らぬイケメンな男性に微笑まれている。
全てはあれが始まりだった。
＿＿＿
私たちは死んだ後、黒い空間にいた。2次元でも、3次元でもない。ただ絵の具の黒で塗りつぶされた世界に、美咲と手を繋いでいた。
どこにも光源なんてなかったけど、美咲だけははっきりとわかった。
「私達って死んだんですよね」
「そうだね」
そう、紛れもなく私達は死んだ。なのに、何故…
私達はお互いに何かを口にすることもせず、ただただ時間が過ぎるのを待った。
何秒だったか何分だったか、或いは何時間、何日かだったか。ここには時間という概念さえもないのだろうか。どのくらい過ぎたか全くわからない。
すると突然紫色の扉と藍色の扉が出てきた。
それは最初からそこに存在してあったみたいに、堂々と、悪びれることなく。あって当たり前だったようにさえ感じる。
「行きますか」
「じゃないと何も始まらないしね」
私達は自然とそれぞれ違う扉の前へときた。まるで初めからから決められた道順のように。
なにもない空間に一つの変化。私達は必然とそれに縋るしかないのだ。
「迎えに行きますね」
「うん。待ってる」
私達はこの扉をくぐることで、もう簡単には会えないことを漠然と、しかし確実に気づいていた。
再び巡り合うことを願って、私達はドアノブに手をかける。
光の向こう側へと、足を踏み入れた。
…………
……
目を覚ませば綺麗な顔立ちをした男女の姿が見えた。
……誰だろう。
「貴方っ！！恭弥が起きたわ」
「なに?!び、ビデオカメラはどこだ?!」
女性は丁寧に私を抱きかかえると、にこりと聖母のような笑顔を向けた。
「恭弥〜お父さんですよ〜」
その側で優しそうにふんわりと笑う男性。まるで幸せの絶頂にいる夫婦のようだった。
私は死んだ。なのに私はここにいる。それは何故か。
簡単な答えだった。
私は再び『生』を与えられたのだった。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます！とても励みになります…！ (2018年4月10日 7時) (
レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです！自分のペースで更新頑張ってください！ (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2013年8月30日 0時
