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通勤時間の路面電車は

のんびりしているくせに

なんだかんだみんなの足代わりだから

それなりに混んでいる

窮屈な隙間に押し込められていると

いいかげん諦めて

自転車登校に戻ろうと思ってしまう

帰りは必ず見かけるのに

何故か朝のラッシュでは君は見当たらない

時間をこまめに変えたり

わざわざ車内を見渡して見送ったり

朝練のふりして早く乗ったりもしたけど

君と会う事は一度もなかった

もしかして僕の存在に気付いて

避けられているんじゃないか?

でも、それなら帰りだって

一緒の電車にはならないだろうし

僕より後に降りる君は

朝は先に乗り込む筈だから

僕に合わせてタイミングよく

電車の時間をずらせられるもんかな?

そんな事を考えながら乗る路面電車は

あっという間に目的地に滑り込む

鞄をかけ直してホームへ降りて

僕は人波に紛れて高校へ向かう

「おはよう」

同級生に声をかけられて

校門へと向かおうとしたその時だった

反対側から滑り込む電車

降りて来る人々の中に君を見つけた

ん?これはどういう事だ?

混乱する頭に呼びかける友達と

素知らぬふりして校舎へ消えて行く君

曖昧な返事を繰り返しながら

動揺する気持ちを抑えようと

僕は闇雲にもがいていた



いつもの様に部活を終え

仲間たちと挨拶を交わして

僕は帰りの電車を待っていた

密やかな気配を感じてチラリと横を見れば

相変わらず文庫本を読む君が立っている

『ねぇ、何で朝は別方向なの?』

さりげなく聞こうとして口を噤む

考えてみたら

こちらが一方的に気になっているだけで

君は僕を知らない筈

だったらかける言葉なんてある?

結局いつも通りに乗って

いつも通りに降りて

ただぼんやりと見送るしか出来ない

……でもこの出来事を逆手に取れば

僕と君との関係も変わる?



次の朝、僕は反対側の屋根の下に居た

昨日会った時間から計算して

学校前に着く様に路面電車に乗り込む

反対側の景色は見た事あるのに

何故か新鮮だった

いつも行く方向と違って

こちらは街の中心部へ向かっている

乗客も学生より社会人が多い

いくつかの停留場を過ぎて

乗降客を見送って6番目

大きな公園の最寄駅から君が乗って来た

混んだ車内では

いつもの席という訳にはいかないみたいだ

乗客に押されて気付けば君は僕の隣

つり革に掴まろうとして目が合う

どうしようか、考えを巡らせる僕に

君は「おはようございます」と呟いた


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青山白樹(プロフ) - だんぼさん» (;゚Д゚)何でその設定が解ったんですか?まさか女学生がだんぼさんモチーフだって事がバレてました?笑雨の日のお迎えって面倒臭いけど2人の距離が縮まる気がしますよね。雨に濡れると甘さを増す香りの中いつまでも優しく甘い2人でいて欲しいと願いを込めました。 (2019年6月29日 18時) (レス) id: dc26697653 (このIDを非表示/違反報告)
だんぼ(プロフ) - 青っち〜天邪鬼で意地っ張りで、でもすごく分かりやすいあの子♪ 蒸し蒸しとした季節ですが爽やかなお話の贈り物 どうもありがとう♪ただひとつだけ心配なのは傘を貰った女子が腐ってたら…(笑)ガン見され尾行されてるかも〜2人ともッ背後に注意よ〜(笑) (2019年6月29日 13時) (レス) id: b513b55378 (このIDを非表示/違反報告)
青山白樹(プロフ) - やまさん» やまさんこちらにも感想ありがとうございます。雨で諦めてたピンクムーンを早朝見つけて朱鷺色に染まり始める空の中の月がほんのり染まった様に見えたんです。ピンクと言っても実際の色とは関係ないのですが。こんな場面なら小さな秘密もきっと特別になりますよね。 (2019年5月22日 10時) (レス) id: dc26697653 (このIDを非表示/違反報告)
青山白樹(プロフ) - やまさん» 素敵な感想ありがとうございます。昔近所に古い喫茶店が有り覗いたら意外に混んでいる店内に驚いた事があります。やまさんの話を聞いて思い出して書いてみました。ソーダ水頼んでもアイスを乗っけるそんな優しいマスターと何かが始まる予感を感じて戴ければ幸いです笑 (2019年5月22日 10時) (レス) id: dc26697653 (このIDを非表示/違反報告)
やま(プロフ) - そして、一つ前のお話も大変遅ればせながら拝読させていただきました。まさに桜月夜の宵!!桜色に染まる月の光を浴びる睦じいお二人に、胸がきゅんとします♪ (2019年5月22日 1時) (レス) id: 0f4c7ca2f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:青山白樹
作成日時:2014年10月2日 12時

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