トーストと目玉焼きと、コーヒー (ページ2)

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「新しいメニューの試作品やねん」

台所からはジュージューと甘い香りがする。

濵田さんのおばあさんが住んでいた古民家は、濵田さんと流星と私のシェアハウスと化している。

お洒落なインテリアはないけど、広い庭と縁側があるところがお気に入り。

「濵ちゃんカフェ空けてていいん？」

「おん。照史も神ちゃんもおるし大丈夫やろ」

濵田さんは隣町でカフェを開いている。メニューは純喫茶のようにシンプルなんだけど常連さんが多いらしい。実は私は行ったことがない。

「そういう流星こそ大学行かんでいいんか」

「３回目の２回生かもしれん」

決して笑い事ではないのに流星はえへえへと笑っている。染めたばかりの金髪がふわふわ揺れて、つい触れてしまった。

「ん？」

「イケメンはいいねえ。目の保養だわ」

「それ本人に言うてまうんや」

また流星はえへえへと笑った。

「さあできるぞー。２人とも準備せえ」

「はーい」

私と流星はテーブルにそれぞれのクロス、お皿、ナイフ、フォークを並べていく。マグカップには熱々のコーヒー。

「いくぞ？ほっ」

濵田さんがフライパンをお皿ひっくり返した直後、濵田さんのスマホがぶるぶる震えた。

「は？え？ちょ、ま、無理！」

手には重い重いフライパン、あちあちのフレンチトーストが落ちそうになっている。濵田さんはプチパニックだ。