魔法使いと夏休み ２

68. ページ18

「ずっと会いたかった人で、自分では会いに行けなかったんやろ？ それをシゲが引き合わせてくれたわけやん、嬉しさしかないで」


「でも会うの嫌って言いはった。綺麗な思い出の前ままにしておきたいって」


「それもわかるなあ」


流星は「んー！」と両手を挙げて背筋を伸ばす。なんでも共感できるやつなんやな。


「俺も会いたいけど会うの怖いなあって思ったことあるもん」


「そうなん？」


「嫌われてたらどうしようとか色々考えるやんか。それなら楽しかった記憶だけ残したいって思うもん」


流星の言葉の意味を考える。正直俺にはちょっとわからんところもあるけれど、流星がそれだけ想ってた人がおるってことやな。


「流星はその人に会えたん？」


「会えた。俺、幸せやで」


そう言って俺に笑いかける流星。まるで俺に向かって言っているように思えて柄にもなくドキドキした。いや、相手は流星やで…。


「だからシゲは落ち込む必要ないで。な、元気出そ」


肩にガシッとたくましい腕が回される。力加減を知らんのかこいつは。


「…うん。中間さん今日来てくれるよなあ」


「来る来る。来んかったら俺迎えに行くし」


呑気な流星の言葉に、それは来そう、なんて思ってしまった。

69.→←67.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す