【d!】甘い甘いスイーツと・・・ (ページ20)

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満月の夜の話ページ20

ある日、彼女はデスクの上にある紙に何かを熱心に書き留めていた

その日は、目も眩むような明るい満月の日であった

「ねぇ、いつまで起きてるの？」

突然の来訪者にグリムは驚き、バッと後ろを振り向いた

東洋人特有の黒髪が月の光でキラキラと光って見える

いつも被っている帽子は外されていて、軍服ではなくラフな格好をしている

白いパーカに黒のズボン、フレームの細い眼鏡をかけている

「なぜ入ってこられたのですか？放っておいてもよかったでしょうに」

「いや、鍵空いてたから伝えにこようかなと。あともうすぐ明日になるし」

グリムは紙をデスクの引き出しの中にしまって、別の紙を取り出す

それはスイーツのことが調べられているものだ

しかし、それに気づかないひとらんらんではない

「熱心に書類でもまとめてた？手伝ってもいいのに」

「いえ、私事ですので」

グリムの表情は光で反射してよく見えない

だが、あまり機嫌がよくないのは目に見えている

ひとらんらんはニコニコと笑みを浮かべ、口を開いた

なるべく刺激しずに、できることなら情報を少しでも聞き出せるように

「そこまで隠すなら深く追及はしないよ。話したくないことぐらい誰でもあるし。
　でも、もしよかったら俺らを頼ってもいいんだから、思いつめたような顔は似合わないよ」

グリムはコクリとうなずき、ひとらんらんに日本酒を出す

「せっかくなんで、飲んでいかれますか？明日はたしか祭日で書類は免除のはずです」

「いいけど…日本酒って度数高いよね？焼酎ほどじゃないけど。まさかの酒豪…」

ひとらんらんの発言にグリムはおしぼりを投げる

それは顔面にクリーンヒットして、ひとらんらんは後ろに倒れこむ

不意打ちに対応できなかったようだ

「ロボロ様よりは弱いですぅ」

杯に日本酒を流し込み、グリムは水で割っていない原酒を一気に飲んだ

ひとらんらんも杯に入っていた酒を飲む

「あー、久しぶりに飲んだな。最近飲んでなかったから美味しいや」

「そうですねぇ。というか日本酒飲めるくらいじゃ酒豪じゃないですよ」

先ほどの発言を根に持っていたのか、思い出したかのようにグリムは言った

ひとらんらんはくすくすと笑い、「あ」と呟いた

「ね、あそこにあるのってさ」

グリムが指さされた場所を見ると、ウォッカの空き瓶があった

彼女は趣味で気に入った瓶を集めているのだ

「やっぱり酒豪じゃん」

グリムは顔を赤らめて、酒を流し込み「内緒ですよ」と笑った