Episode79 ページ42
「だ、そうですよ？Aさん」
「なっ…」
「あ、姉上！？」
ヘルエスは振り返りもせずに声をかける。しかし現れないAにサンダルフォンとセルエルは首をかしげる。
「どうしたのですか。そこにいらっしゃるのでしょう？」
曲がり角へ歩み寄り、何かを引っ張るヘルエス。その先にはAが全力で抵抗するのであった。
「…あ、姉上…いつからお気づきに？」
「ふふ、姉の勘です。ほら、Aさん。こうして貴方を応援する方の期待を裏切るのですか？」
「う、裏切るって…」
「こうなってしまっては、姉上に勝てる者はいません。今折れた方が楽ですよAさん」
「セルエル、何か言いましたか？」
「いいえ、何も」
「…って言われてもなぁ…」
腕を逃がすまいとつかみ続けるヘルエス。前方にはサンダルフォン。完全に包囲されたAはため息を吐く。
「…一年、店をつぶしたら許さねぇ」
「あら、素直じゃないですね」
「姉上…」
「いいだろう…A、俺にまた剣術や世界の事を教えてくれ。何も知らないまま座だけの天司長じゃ顔が立たないからな」
「…仰せのままに」
あっさりという事を聞いたAに違和感。ヘルエスが手を放すとAは表情を一変させる。
「何も騎士団に行くのが嫌なわけじゃない。むしろなまった体を動かすにはちょうどいい…心配だったのは、お前だよサンダルフォン」
「俺が？」
「僕のいないことなかっただろ…それで、ちょっとな」
「ふふ、弟のようですね」
「んなっ…俺が弟だと？」
「Aさんのが早く生まれたのでしょう？それならば弟です」
ヘルエスの笑顔にサンダルフォンは開けた口を閉じる。セルエルが無言で首を振ってるのを見て黙るほかなかったのだ。
「では、すぐにでも行こうか」
「団長殿には先ほど話をつけさせていただきました。アルスターの船で島には向かいましょう」
「わかった」
ヘルエスに手を引かれ、Aはその場から離れる。その場に残されたセルエルはサンダルフォンとその姿を見つめる。
「姉上は姉上なりにAさんも貴方の事も考えていたみたいです。復讐、というのは愚かで悲しい。その事を知っているAさんにこそ、剣を教えていただきたかった。そして、少し整理する時間もAさんにも貴方にも必要です」
「…女、というのは頑固だな」
「同意しますが、男というのはいつの時も女性には勝てないのです」
「ふん…ナンセンスだ」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
