Episode80 ページ43
「…」
ヘルエスとともにアルスターに向かうA。必要な荷物は一式持ってきたが、それほど荷物は多くならなかった。
「どうされましたか、Aさん」
「ん？あ、いや…」
「ふふ、寂しいのですか？」
「ち、違う！それじゃ子供みたいじゃないか…」
「貴方は人間の世界においては子供同然です。おそらく、サンダルフォン殿も貴方の事を親のように守らねばと思っているのでしょう」
「はぁ！？サンダルフォンに守られるなんてゴメンだぞ…」
「あら、彼は貴方方天司の長なのでしょう？」
驚いた様子のヘルエスにAは剣を向ける。
「僕はサンダルフォンの守られるほど弱くない。そもそもアイツは…天司長になりたかったわけじゃないんだ」
「私は…弟であるセルエルが危険になった時、真っ先に動く自信があります。しかし、セルエルももう立派な大人…私はセルエルを信じているからこそ、無茶ができるのです。その気持ち、わかりますよね？」
「遠回しに無茶をしてるって言われてないか？」
「どうでしょう」
剣を下したAは、その切っ先を見つめる。光が反射して神々しく輝くその剣は、かつての主を思い起こさせる。
「…やっぱり、過保護すぎたかなぁ。って思ってはいたけど…」
「まるで小さな兄弟が守りあってるようでしたよ」
「う…なんかなぁ…どうにも、心配で」
「何がです？」
「ちょっと目を離すと、また前のようになるんじゃないか…って」
Aは遠くの空を眺める。今は蒼く澄んでいるが、少し前は赤く燃えるような色に変わっていた。
「まあ正直…行ってこい、って言われて安心した気もするんだよ。僕にとってのサンダルフォンは確かに弟みたいだったし。親の代わりであるルシフェル様を亡くしたなら、僕が代わりになりたかった」
Aの横にヘルエスも並ぶ。
「けど…実際に引きずって過去に囚われていたのは僕だった。わかってはいたけど…きっと、サンダルフォンを守ることで贖罪したかったんだ。僕は…最低だ」
顔を伏せるA。その背をそっとヘルエスはなでる。
「ふふ、数十年しか生きていない私でも、出来ることがあるのですね」
「…へへ、ありがと」
ヘルエスにあたたかな何かを感じるA。それはミカエルを思い起こさせる。
「少し訂正をしますが…貴方は最低などではございませんよ」
「…ん？」
「贖罪と申しましたが…かつて、この国を破滅に導いた我が父コノール王は無責任に死に、ノイシュは私達を助けてくれます」
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作者名：御煉 | 作成日時：2019年4月7日 14時
