検索窓
今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:12,447 hit

Episode13 ページ26

そして翌朝、甲板から空を眺めるA。風が冷たく、肌を突き刺すように流れる。

「…おはよう」
「あぁ、おはよう団長。眠れたか?」
「う〜ん、いつも通りだよ」
「それならいいさ」

あくびをしながら歩いてきたグラン。グランも同じように空を眺める。

「いよいよ…だな」
「A、緊張してるの?」
「…そりゃ、僕だって緊張ぐらいするさ」
「以外だ。あんなに終末の時は堂々と動いてたのに」
「あれは…仲間が傍にいたから、だと思う。でも、今回はミカエル達が離れる。判断を後悔するつもりはないけど、正直不安…ではある」

Aのこぼれ出る弱音に、グランは真剣な表情になる。

「…どうしてAが行こうと思ったの?」
「行かなきゃいけない…って思ったんだ。虚無の力は現状僕しか扱えない。奴らの望みが僕である以上、行くべきだと思った。そして、行くこと自体は何も怖くない」
「誰かが…いなくなりそう、とか?」
「…信じてない、って言われても仕方ないけどな」

苦笑いしたA。グランは首を振る。

「それは…仲間だから心配もするよ。本当は僕を連れて行くことだって嫌だったみたいだし」
「一人で戦えるならそうしてる。けど…もし僕がしくじって、何かあったときに迷惑はかけたくなかった」
「大丈夫。何があっても僕は皆を守るし、戦うよ」
「…ありがとう。本当にお前は不思議な奴だな」

フッ、と笑ったAの顔に僅かだが明るさが戻る。

「…グラン、真っ赤な朝焼けや夕焼けを見たことあるか?」
「あるけど…どうしたの?」
「ルシフェル様は蒼であることを望んだのに、どうして朱い空があるのか、すごく考えたことがあったんだ。それで、言われたのが、蒼い空が誰もが好きとは限らない。だからこそ、少しでも好かれる空であってほしい、と願ったそうだ」
「へぇ…そうだったんだ…」
「もうこの話を知ってるのは僕とグランだけだ…グラン、約束してほしい」
「…どうしたの?」

真剣な表情に、グランも顔を引き締める。

「…真っ先に考えるのは、誰の命よりも自分の命であってほしい。命を賭して守れば、多くの人々が救われても、必ず悲しむ人々もいる。そして、ルリアと命がつながってる以上、危ない真似はしないでほしい」
「わかった。なら、Aも約束」
「…ん?」
「また一緒に…珈琲飲もうよ。喫茶店とかじゃなくて、みんなで」
「…あぁ、約束だ」

グランとAの約束は蒼に染まりゆく空の中に消えていくのだった。

Episode14→←Episode12



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (7 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
13人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ミレン(プロフ) - よせふさん» おおお!ありがとうございます!家に帰ったらすぐ取りかからせて頂きます!もし気に入っていただければまたリクエストください! (2019年4月2日 11時) (レス) id: 62a512f1a1 (このIDを非表示/違反報告)
よせふ(プロフ) - はじめまして、もしよろしければルシフェル様とサンダルフォン、主人公の3人が中庭でほのぼのしているお話が見たいです…!二人と仲良しな主人公が見たいです!ぜひ!!ご検討ください!! (2019年4月2日 1時) (レス) id: f12f54b1ee (このIDを非表示/違反報告)
ミレン(プロフ) - 大真面目にコメントください (2019年4月2日 0時) (レス) id: 62a512f1a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:御煉 | 作成日時:2019年3月29日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。