Episode13 ページ26
そして翌朝、甲板から空を眺めるA。風が冷たく、肌を突き刺すように流れる。
「…おはよう」
「あぁ、おはよう団長。眠れたか?」
「う〜ん、いつも通りだよ」
「それならいいさ」
あくびをしながら歩いてきたグラン。グランも同じように空を眺める。
「いよいよ…だな」
「A、緊張してるの?」
「…そりゃ、僕だって緊張ぐらいするさ」
「以外だ。あんなに終末の時は堂々と動いてたのに」
「あれは…仲間が傍にいたから、だと思う。でも、今回はミカエル達が離れる。判断を後悔するつもりはないけど、正直不安…ではある」
Aのこぼれ出る弱音に、グランは真剣な表情になる。
「…どうしてAが行こうと思ったの?」
「行かなきゃいけない…って思ったんだ。虚無の力は現状僕しか扱えない。奴らの望みが僕である以上、行くべきだと思った。そして、行くこと自体は何も怖くない」
「誰かが…いなくなりそう、とか?」
「…信じてない、って言われても仕方ないけどな」
苦笑いしたA。グランは首を振る。
「それは…仲間だから心配もするよ。本当は僕を連れて行くことだって嫌だったみたいだし」
「一人で戦えるならそうしてる。けど…もし僕がしくじって、何かあったときに迷惑はかけたくなかった」
「大丈夫。何があっても僕は皆を守るし、戦うよ」
「…ありがとう。本当にお前は不思議な奴だな」
フッ、と笑ったAの顔に僅かだが明るさが戻る。
「…グラン、真っ赤な朝焼けや夕焼けを見たことあるか?」
「あるけど…どうしたの?」
「ルシフェル様は蒼であることを望んだのに、どうして朱い空があるのか、すごく考えたことがあったんだ。それで、言われたのが、蒼い空が誰もが好きとは限らない。だからこそ、少しでも好かれる空であってほしい、と願ったそうだ」
「へぇ…そうだったんだ…」
「もうこの話を知ってるのは僕とグランだけだ…グラン、約束してほしい」
「…どうしたの?」
真剣な表情に、グランも顔を引き締める。
「…真っ先に考えるのは、誰の命よりも自分の命であってほしい。命を賭して守れば、多くの人々が救われても、必ず悲しむ人々もいる。そして、ルリアと命がつながってる以上、危ない真似はしないでほしい」
「わかった。なら、Aも約束」
「…ん?」
「また一緒に…珈琲飲もうよ。喫茶店とかじゃなくて、みんなで」
「…あぁ、約束だ」
グランとAの約束は蒼に染まりゆく空の中に消えていくのだった。
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ミレン(プロフ) - よせふさん» おおお!ありがとうございます!家に帰ったらすぐ取りかからせて頂きます!もし気に入っていただければまたリクエストください! (2019年4月2日 11時) (レス) id: 62a512f1a1 (このIDを非表示/違反報告)
よせふ(プロフ) - はじめまして、もしよろしければルシフェル様とサンダルフォン、主人公の3人が中庭でほのぼのしているお話が見たいです…!二人と仲良しな主人公が見たいです!ぜひ!!ご検討ください!! (2019年4月2日 1時) (レス) id: f12f54b1ee (このIDを非表示/違反報告)
ミレン(プロフ) - 大真面目にコメントください (2019年4月2日 0時) (レス) id: 62a512f1a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御煉 | 作成日時:2019年3月29日 23時