酩酊 ページ1
*
おもい。フラフラする。景色が揺れてる……。
「うぇぇ……」
吐き気を催して近くにある電柱に体を預ける。
服が汚れるとかもうどうでも良かった。久々に仕事に追われない休日に、朝っぱらから飲みに行ったのがそもそも間違いだった。
けっこうな大通りの中に電柱で立ち尽くしているので、真っ昼間のいま通行人の視線が刺さった。
「よいしょ…っ」
そもそも歩くのが困難なほど飲む気はさらさらなかったが、なんともお喋り上手な店員さんに煽られ続けた結果、見事な酔っ払いができあがった。
肩にかけた鞄がずり落ちないように持ち直す。
電柱から離れて歩きだした途端、ぐわん、と脳が一回転した気がする、
きっと死にそうな青い顔で歩く私を、絶対通行人避けてる。
うん、まあ。わかるけどね。
口を押さえながら、なぜか涙が滲んできた。
いつもは飲まないビールをたらふく煽ると、自分は情緒不安定になるらしい。
会社の後輩が起こした失敗を擦り付けられたことを思い出して、さらに視界が揺らめきだす。そして、今日飲みに行った理由はこれだったと思い出した。
「うーーーー…気持ち悪い」
社会人4年目にして、流石に公道の人混みのなかで泣き出すのは、なけなしのプライドが許さなかった。
人波に揉まれながら、小走りでなんとか細い路地に入り込んだ。
酔いのせいでさっきより気持ち悪いし、とちゅう涙はぼろぼろ零れたけど、もういいや。気にしない、気にしない。
そう自棄になっていた矢先、どんっ、と何かにぶつかって、吐き気とともに頭が揺れた。
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作者名:たおし | 作成日時:2019年10月22日 21時