Daddy . T.Iwata

▽ ページ6

.


無言で皿を洗い始めたA。


自分だって、決して逞しくない体で俺に説教してくんだから。笑


後ろからゆっくり抱きついて、俺は説明する。


剛典『……、確かに俺、痩せたよ。

役作りもあったし、ツアーのリハーサルもあったし。

体力が追いつかなくて、点滴も打った。


だけど、元気だよ。

本当に、心配しないで。』


『……、うん。』



剛典『……でも、Aの飯食いたい。

打ち上げの飯とかって、味濃くてさ。』


そこまで言うと、やっとほっとしたのか柔らかい微笑みを浮かべるA。



『いいよ、今日何食べたい？』


リハーサル中にずっと食べたくて、一時なんてそれを楽しみに踊ってたくらい好きなもの。


他の誰にも知られたくなくて、テレビでも言ってないもの。



剛典『肉じゃが、たくさん食べたい。』


『言うと思った。笑

夕飯で作るね。』


そういって、皿洗いを再開し始めるA。


剛典『せっかくの休みなんだからさぁ。

……、皿洗い中断してよ。』


『だめー。』




前までは顔を真っ赤にして、素直についてきたのに。


今やあっさり交わして。


早くー、と急かして、皿洗いを終わらせたAに抱きつく。



剛典『寂しかったんでしょ。』


『……うん。』


剛典『やっと素直に戻ったね。笑』



『さーちゃんができる前は、ずっと寂しくて辛かった。

さーちゃんができてからは、寂しさも紛らわせたんだけど、寝ちゃってからは虚しくて。』



剛典『ごめんな、いつも寂しい思いさせて、』


『ううん、その分会えたとき嬉しいから、』




全く良くできた奥さんだ。

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す