一夜切りはお好きなように【2j3j】

四夜 ページ6

「それでねぇ……蜜月ちゃん？聞いてる？」


『えぇ、勿論。聞いてますよ』





隣のテーブル席の会話をな



更にかれこれ30分
一向に帰る気配を見せないコイツに苛立ちを覚えてきた

せっかくきっかけがあったのに
彼らには近づけないままだ


しかし顔に出すわけにもいかず
ばれないようにふぅ、と息をつく



と、カウンターに置いていた手に生温かいものが重ねられる





『っ！？』


「ねぇ、本当に聴いてる？
　今日ずっと上の空じゃない？」


『そんなことないですって
　ちゃんと聞いてますよ？』





コイツ……


すり、と手の甲を撫でる指に嫌悪感が増す





「本当？いつもより元気がないみたいで心配だなぁ

　……ねぇ、この後蜜月ちゃんのシフトが終わったらさ、
　どうかな、一緒に食事でも…」


「あの」


「ッ……！？」


『……！！』





手首を掴まれ、思わず手が出そうになったその時
細くて少し冷たい指先に手を掬われる


その指の先には、さっきのアイドル





「お会計お願いしたいんですけど、いいですか？」


『ぁ………はい、お伺いいたします』





ナイスタイミング

っていうか、狙ってたんでしょうけれど





『310円のお返しになります』


「ありがとうございます

　……あの、」


『ッ…！？』





お釣りを渡した手を掴まれる


あら、そっちから仕掛けてくるのね？





『ぇ、あの…？』


「さっき、助けてくれましたよね」


『さっき？』


「隣の女性客が僕らのこと盗撮しようとしてたの」


『……あぁ！いえ、店員として当然の対応をしただけですので』


「………ふぅん」





興味ありげな視線ね？

アイドルで？しかも言い寄ってくる女は大量で、女遊びが激しくて？
そんなの…







　





自分に興味ない女が好きですって、言ってるようなもんじゃない？





「ね、これ、僕の電話番号」


『ぇ………』


「今日のお礼、させてくれません？
　良ければ連絡ください。それじゃあ」


『ぁ、えっ！？ちょっと！






　…………へぇ、流石は女たらし』




その背が遠ざかったところでぽつりと零す


手馴れてるのね
まぁでも悪いけど、こういう駆け引きは貴方たちの専売特許じゃないのよ？



書かれた番号をスマホに登録した後、メモを破り捨てた


















　













「次はあの女人がターゲットってワケ？」


「まさか
　お礼だよ。オ・レ・イ」


「ほんっとタチ悪、お前」


「お前に言われたくない」

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