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いつまでもこの時間が続けばいいのに、と思っていた夏祭りももう二週間前のこと。
思えば人を好きになったことなんてなかった。
でも牛沢くんのあの笑顔を思い出すと、なんか急に会いたくなって、やっぱり好きだなぁと実感する。
この気持ちを誰かに話したくなるのも、恋をしたらよくあるのことなのかな。
姫鳴に連絡しようとスマホを手に取ると、見慣れない相手から変なメッセージが来ていた。
"!"という一文字。
送り主の名は"あ"、つまりキヨだ。
"そっちから連絡してるじゃん"と送ると"誤爆しちった"なんてすぐに返ってきたけど、そんなわけない。
どうせ暇だから連絡してきたんだし、キヨでいいや。話くらい聞いてくれるよね。
"明日空いてる?"
"うん"
"遊んであげてもいいよ"
"上からやめろ"
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「お前、きもっ」
「うるさい。そのうち慣れるし!」
Aはそう言ってパンケーキを口に入れると、もぐもぐしながら俺に睨みを利かせる。
だって普通、コーヒーにガムシロップ四つも入れて飲む奴いねぇだろ。
しかも飲めてねぇし、渋い顔してるし……そんな無理して飲む必要あるか?
でも本当に夏休みにAに会えるとは思ってなかったから、正直嬉しい。
しかもあっちから誘ってきたんだから、俺はテンションが上がりまくっている。
「夏休み何してた?」
「ほぼ部活」
「うっわ可哀想」
「あ?Aは?どうせ引きこもってたろ」
「おっしゃる通りです〜〜、あ、でも花火は見たから勝ち組かなぁ」
Aは嬉しそうに八重歯を見せて笑った。
花火ね。うっしーと行ったやつ。
あぁ、男女で花火見て何もねぇわけないよな。手とか繋いだんかな。
いや、うっしーはそんなことするほど大胆な奴じゃない。
てかまずうっしーがAのこと好きとは限んねぇじゃん、その逆も!
「今日ね、キヨに話したい事があってさ」
恥ずかしげに俺を見つめるA。
なんか嫌な予感すんだけど。
俺が聞きたくない事を言いそうな感じ。
なんとなく分かんだよ。
「私ね、牛沢くんのこ……」
間に合っ、た。
俺は慌ててAの口を塞いだ。
Aはもごもごと俺の手の中で喋ろうとするが、言葉になってない。
うっしーのこと好きだとか、そんなん言うな。
それをA本人の口から聞くまでは、俺まだ馬鹿なフリしてられるから。
大体そんなこと打ち明けられたら、俺のこの気持ちはどこに仕舞えばいいんだよ。
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ゃゅ(プロフ) - いちご丸さん» ありがとうございますめっちゃ嬉しいです!頑張ります!(^-^) (9月15日 1時) (レス) id: fbf309b419 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - めっちゃ好きです!頑張ってください (9月14日 21時) (レス) @page1 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゃゅ | 作成日時:2023年8月30日 0時