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「え、キヨくん帰るん?」
「帰る」
「うっしーとご飯行くけど」
「ふーん」
「ガッチさんも合流するけどー」
「へぇー」
「俺も行かせてくださいって言えや」
終業式が終わり、11時。
急ぎ足で昇降口を出る俺に、いつもの如くだるい誘い方をするレトさん。
そんなに来てほしいか、と思いつつ「今日はパス」と言って小走りで駅に向かった。
目的地は、湊川さんのお父さんが経営するケーキ屋。
学校から電車で三駅のところにあるらしく、俺の家とは逆方面。
俺の家の周辺はまぁ比較的普通の町であるのに対し、こっち側はいわゆる高級住宅街だ。
電車から降りて駅を出ると、目当てのケーキ屋はすぐそこにあった。
白を基調とした外観から高級感が漂う。
「いらっしゃいませ〜」
若い女性の上品ないらっしゃいませを聞いて、入店したことを一瞬にして後悔した。
やば、何買うか決めてない。
いや見てから決めりゃいいんだけどさ、悩みすぎても迷惑だよな……
てか俺なんで店入ってんの。場違いすぎるって。
ショーケースを見るも、難しい外国語の名前がついたケーキばかりで困惑していると、「悩んでるね〜」と厨房から来た男性が声をかけてきた。
「すみません……えっと、じゃあこれで」
焦った俺は無難にショートケーキを指差し、会計を済ませて、ケーキが包装されるのを待っていた。
が、店員さんはケーキを取り出すのにてこずっている。
「ごめんね、新人の子でね」
「いや、全然大丈夫っす」
「……あれ、キミうちの子と同じ制服じゃないか」
この人が湊川さんのお父さんだと理解した瞬間体が固まり、急に緊張し始めた。
なんでだろ、なんか悪いことしてる気分。
「湊川さん、ですよね」
「もしかしてAの友達?」
「あー……はい!」
「本当か!?」
驚いた後すぐにほっと安心した顔をする湊川さん。
友達ではないんだけど別にいいよな、どうせこれからなるわけだし……
「A、友達のこととか父さんに喋ってくれないから心配してたんだ」
「あー……そうなんすね、」
「気は強いけど良い子なんだよ。どうか仲良くしてやってくれ」
「はい。もちろんです」
「お待たせしました」と綺麗に包装された箱を手渡してくれた店員さんに軽く会釈した後、湊川さんに深いお辞儀をした。
「また、来ます」
「あとAさんには言わないでください、ここに俺が来たこと」
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ゃゅ(プロフ) - いちご丸さん» ありがとうございますめっちゃ嬉しいです!頑張ります!(^-^) (9月15日 1時) (レス) id: fbf309b419 (このIDを非表示/違反報告)
いちご丸 - めっちゃ好きです!頑張ってください (9月14日 21時) (レス) @page1 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゃゅ | 作成日時:2023年8月30日 0時