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「えー第三回、なんで小鳥ちゃんは出世しないんだ大会、はじめま〜す」
うぇ〜い、と気の抜けた歓声が上がる。当の本人は潔く熱燗に酒を注いでガン無視している。
「ハイ」
「おう、ひよ里」
「遅刻魔」
「諦めろ」
「ハイハ〜イ!」
「白」
「小さすぎるから〜!」
「白、そこになおれ」
気にも留めずに突っ込む茜はもはや達観としていた。
隊長格に並ぶ見た目小さい無名の彼女は違和感の塊でしかないが、店の店員にとっては見慣れた光景だった。潰れかけている隊長達の中、シラフで熱燗を注ぐ彼女の様子はこの店の名物になりかけている。
「なぁ、Aは悔しくないんか?」
「何が?」
砂肝を口に運びながら横目で見れば、いつもより柔らかい目つきをしたひよ里が不思議そうに問う。
「喜助のアホが最近隊長に就任、ハッチんとこの大鬼道長と隠密機動の長、茜の昔馴染みばっかやないか」
「...へえ、それで?」
「はぁ?」
「肩書も地位も興味ないんだよね〜。めんどくさいしどうでもいいじゃん?」
「Aちゃんらしいね」
「そもそもやりたいことも無いし、面倒事が増えるのは御免だね」
「...アホくさ」
「ひよ里〜、バカ原が何かしたら私と夜一で叩き直してあげるよ」
「ホンマ喜助が泣くで??」
飲み仲間と馬鹿やって、毎日適当に過ごして、そんな日常が続けばいい。
「あ、潤林安の保護結界張り直さないとだわ」
「そろそろ真面目にやらないとハッチが過労死しちゃうよ...」
「しっかり仕事しろよ〜、したっぱ」
「黙りやがれ、へっぽこ隊長ども」
口内だけ酒の味が残り、酔い足りない身体で飲み屋を後にした。
今思えば珍しく酔っていたのかもしれない。
僅かに違う違和感に気付かなかったあの日を、もう後悔したりはしないけれど。
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作者名:nattu | 作成日時:2023年1月8日 11時