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unknown ページ31

「テメー、あそこに星見がいるのを知っていて俺様をシアタールームに寄越したな?」
「……」



コクリと頷くその人に、晃牙は再び大きな大きな溜め息をつく。



「ならお前が行けば……って、それがバレたらまずいのか。あ?“気づいたのか”って?まァ俺様は鼻が利くからな」


「というか」と、たじろぎ気味の彼に晃牙はさらに詰め寄る。



「お前も俺様が気づくって思ったから俺様に“星見に近づかない方がいい”って言ったんだろ?それぐらいわかるっての!」


そう、Aがリズリンにいた期間中晃牙がどこか彼女を避けていたのはそれ故である。
初め彼にそう言われたときにはA自身に問題があるという意味かと思ったのだが、完全に彼の私情だったらしい。

友人であるあんずの後輩が問題のある人間ではなかったことに安堵しつつ、その変わりに心に湧いてきたのは目の前の彼への憤り。


「……言えばいいじゃねぇかよ。星見に。そんな陰でコソコソ見守るぐらいならよ」
「……」
「だあああ!また首横に振りやがって!」


申し訳なさそうに微笑みながらも、彼は晃牙に自分の計画を明かしていなかったことに気がつく。
……彼になら、明かしていいかもしれない。


「……」
「あ?なんだよ聞いてほしいことって?」
「……───」


彼がそう述べると、晃牙は驚いたように金色の目を大きく開いて固まってしまった。
夜故の耳が痛くなりそうな静寂が気まづくて目を逸らせば、その肩を思いっきり晃牙が揺らす。


「テメー、それ本気で言ってんのか!?」


晃牙があまりに揺らすものだから少し酔いそうになりながらも頷けば、揺れがさらに強くなった。


「いやその事情に俺様が口出すのは違う気もするけどよ、それは違うだろ?!ハ、なんだよ“あの子にとっての最善”って!」


そこまで否定されると思っていなかったので少し顔を顰める。

晃牙はその表情を揺らされた苦しさ故だと思ったのか、「悪ィ」と言って手を放した。


「確かに俺様は星見のこと全然知らねぇけどよ。今日初めて話したし。けど、流石にひとりじゃ立てないような子どもじゃねぇだろ。少なくとも自分の身は自分で守れる人間だろ」



その言葉に今度は彼が目を見開く番だった。
「もう戻ろうぜ」と促す晃牙の言葉に頷きながらも、追憶するのはあの幼い日のこと。



「……あの頃とは、違う……」



そんな小さな小さな独り言は、瑠璃色の空に吸い込まれて消えていった。

その狂気を知っている→←・



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紅鮭@くじら(プロフ) - 甘風さん» 星見のキャラを気に入っていただけてすっごく嬉しいです〜!ありがとうございます(..›ᴗ‹..) 更新がんばります!! (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - みるタピさん» コメントありがとうございます!そろそろ更新速度戻す予定なのでこれからもよろしくお願いします!(⑉• •⑉) (2022年12月9日 16時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)
甘風 - とっても面白くて好きです!更新頑張ってください!星見ちゃんのキャラが良い...! (2022年12月5日 23時) (レス) @page33 id: e3065dc72d (このIDを非表示/違反報告)
みるタピ(プロフ) - とても楽しんで読ませていただいています!テスト大変だと思いますが頑張ってください! (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: c5e7b71543 (このIDを非表示/違反報告)
紅鮭@くじら(プロフ) - 立花さん» 立花さん、コメントありがとうございます!!正直ギャグには全然自信がないのでそう言っていただけて嬉しいです!笑 更新がんばりますね〜!! (2022年9月30日 21時) (レス) id: f1236c4d6f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅鮭 x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年8月28日 12時

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