phase8 ページ9
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マダムからAを預かり、拠点に連れ帰った翌日
いつもより早く目覚めたルプスはジムで軽くトレーニングをしていた
シャワーを浴び汗を洗い流す間、ふとAとのやりとりを思い出してしまう
(可愛らしい人だ)
まっすぐにルプスを見つめる澄んだ瞳
身振り手振りで懸命に思いを伝えようとするひたむきさ
言葉がなくても素直な人柄が伝わって来る
キューブとエイノットが退室し二人きりになった室内(※お供の金の獅子は酒盛中)
「 DPDのこのアプリを開いてもらえますか? 」
キューブに言われたとおり、Aにとあるアプリの説明を始める
Aが桜模様のアイコンをタップすると、ルプスのDPDが振動する
そしてAのDPD上に文字盤が現れ、ルプスのDPD上には掲示板が現れた
「 貴女と俺のホットラインです
俺が側にいないときは、コレですぐ連絡がとれます 」
キューブが二人のDPDのIDをリンクさせて設定したのだ
万が一の事態は真っ先にルプスが気づくために
「 えっと…何か打ってもらっていいですか? 」
照れくさそうルプスが言った
少し考えたAは、
ピコン
――― るぷすさん ―――
「 なっ! 」
桜色で流れるようなフォントが浮かび上がる
自分には不似合いなソレに驚き、ルプスは頬が熱くなるのを感じた
動揺を隠そうと口元を抑え、Aをチラッと見ると
自身が打った文字を見て顔を真っ赤にしていた
「 ど、どうしましたか? 」
赤くなりながらポチポチ打ったのが
――― おなまえ ―――
――― ひらがなでごめんなさい ―――
――― でも ―――
――― へんかんできないです ―――
あわあわしながら、文字盤と格闘している
その指をふわりと包み、ルプスは優しく制した
「 貴女らしいですよ
ひらがな、やさしい雰囲気で 」
きっと簡潔な意思疎通を目的としたため、キューブが変換機能を省いたのだろう
「 俺が貴女に連絡するときは声が届きますから 」
そう伝えると、ルプスの唇とDPDを交互に指差すA
何か話して欲しそうに
「 あっ、えっと、Aさん 」
AのDPDからルプスの声が響いて、
二人で微笑み合って、
桜色と声音の『 おやすみなさい 』で一日が終わったのだ
シャワー後、
自室に戻ったルプスが隣室の異変に気づいた
ドアが半開きでAの気配が無いのだ
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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時