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phase8 ページ9

*





マダムからAを預かり、拠点に連れ帰った翌日

いつもより早く目覚めたルプスはジムで軽くトレーニングをしていた

シャワーを浴び汗を洗い流す間、ふとAとのやりとりを思い出してしまう



(可愛らしい人だ)



まっすぐにルプスを見つめる澄んだ瞳

身振り手振りで懸命に思いを伝えようとするひたむきさ

言葉がなくても素直な人柄が伝わって来る

キューブとエイノットが退室し二人きりになった室内(※お供の金の獅子は酒盛中)



「 DPDのこのアプリを開いてもらえますか? 」



キューブに言われたとおり、Aにとあるアプリの説明を始める

Aが桜模様のアイコンをタップすると、ルプスのDPDが振動する

そしてAのDPD上に文字盤が現れ、ルプスのDPD上には掲示板が現れた



「 貴女と俺のホットラインです

  俺が側にいないときは、コレですぐ連絡がとれます 」


 
キューブが二人のDPDのIDをリンクさせて設定したのだ

万が一の事態は真っ先にルプスが気づくために



「 えっと…何か打ってもらっていいですか? 」



照れくさそうルプスが言った

少し考えたAは、



ピコン


――― るぷすさん ―――



「 なっ! 」



桜色で流れるようなフォントが浮かび上がる

自分には不似合いなソレに驚き、ルプスは頬が熱くなるのを感じた

動揺を隠そうと口元を抑え、Aをチラッと見ると

自身が打った文字を見て顔を真っ赤にしていた



「 ど、どうしましたか? 」



赤くなりながらポチポチ打ったのが



――― おなまえ ―――



――― ひらがなでごめんなさい ―――



――― でも ―――



――― へんかんできないです ―――



あわあわしながら、文字盤と格闘している

その指をふわりと包み、ルプスは優しく制した



「 貴女らしいですよ

  ひらがな、やさしい雰囲気で 」



きっと簡潔な意思疎通を目的としたため、キューブが変換機能を省いたのだろう



「 俺が貴女に連絡するときは声が届きますから 」



そう伝えると、ルプスの唇とDPDを交互に指差すA

何か話して欲しそうに



「 あっ、えっと、Aさん 」



AのDPDからルプスの声が響いて、

二人で微笑み合って、

桜色と声音の『 おやすみなさい 』で一日が終わったのだ



シャワー後、

自室に戻ったルプスが隣室の異変に気づいた

ドアが半開きでAの気配が無いのだ





*

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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時

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