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phase6 ページ7

*





キサラギはあの光景を忘れることはないだろう



「俺はROWDY SHOGUNのルプスです。 貴女を全力でお護りします 」



Aの前に跪いて手を差し伸べたルプスを

はにかみながら小さな手をゆだねたAを



ルプスは自覚しているのだろうか?

警護対象者に“ 私”とは言わず“俺”と名乗ったことを…





*





「 さあ呑め呑め! 」



大宴会in拠点

Aが着いて早々酒を酌み交わす男達

マダムの計らいで大量の酒とオードブルが届けられた

なぜかおでん屋台までデリバリーされている



「 父ちゃん、一緒に呑もうぜ 」



幼少期ライオンに育てられたベイリーがビール樽の蓋を開ける

その中に首を突っ込んいる金の獅子

この獅子、実体じゃないのにどこにビールが入って消えるのだろう?

メンバーの数人はそう考えているはず

特にキサラギ

残りは深く考えないはず

特にベイリー



「 ルプスさんは? 」

「 俺はいい。警護中だ 」



リュカが持ってきたグラスを断り、傍らに座らせたAを見つめる

このROWDY SHOGUNの拠点のど真ん中に辿りつける輩なんているわけないのに

真面目なルプス相手に沸き起こったリュカの悪戯心



「 僕もまだ飲んでません。ねえルプスさん、警護交代しましょう 」

「 は? 」



リュカの意図がわからず怪訝な表情を浮かべる



「 昨夜は怪盗、今日は獅子。連日の戦いでお疲れでしょう?

  僕は異能発動するほど戦ってないし

  飲んできてください。頑張ったご褒美ですよ 」



幼さが残る顔で笑うリュカ

笑顔で中性的な美貌が更に引き立つ

その笑顔はルプスからAに向けられる



「 お嬢さん、僕がエスコートします

  一緒に料理を取りにいきませんか?

  うちの連中は酒はうわばみ、食欲も底なしです

  早くしないと皿が空になってしまいますよ 」



差し出された手を見つめたまま小首をかしげる

どうしようか迷っているのだろう



「 俺が行く。リュカこそ楽しんでこいよ 」



決めかねているAの代わりに動いたのはルプス

気が利かなくてすみませんと謝ると、驚いたようにAは両手を横に振った



「 ふうん。ルプスさん、お気をつけて 」

「 ん? ああ 」



ルプスにはリュカの真意は伝わらなかった



気をつけて…

己の想いに…



この大宴会の翌日、金の獅子の呼び名が“金ちゃん”になった





*

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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時

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