文章越しの先輩 ページ14
□
スーパーで鉢合わせた先輩とはお店を出た先で別れて、私は私の家に帰る。
色んな人の生活が詰まった集合団地の一つ。そこに私の、私達の家はあった。
コンクリート造りの階段を三階分上って、錆び付いた扉を引っ張る。
すると途端に中から暖かい光が漏れだしてきて、薄暗い廊下に立つ私を、優しく迎え入れてくれた。
「 あ、ねぇちゃんお帰りー！ 」
「
「 ねぇさんうるさい。近所迷惑 」
「 お、反抗期娘！相変わらず口が悪くてねーちゃんは安心！！ 」
「 殺す 」
真っ先に迎えに来てくれた末っ子の一樹を抱き上げて、エプロン姿の二つ下の妹に、ついさっき買ってきた食材を手渡す。
反抗期と思春期真っ盛りだけど、優しいところは全然変わらない妹。私は反抗期が無かったから、妹には思う存分悩んでほしいところである。
末っ子を抱いたままリビングに行くと、長男と次男が丁度口喧嘩をしていた。
二人とも高校生と中学生だからか、最近はやけに喧嘩が多い。内容は毎回しょうもないけど。
「 あんた達喧嘩が好きねぇ。口喧嘩オリンピックにでも出たら？ 」
「 は？ざけんなババア 」
「 あ？やんのかくそ餓鬼。長男と長女で決着つけるか？お？ 」
「 ねぇ俺ほっとかれてる 」
「 はい、じゃあ長男と次男でしっかり風呂掃除してきてくださーい 」
ぶつくさ文句を言う二人を狭い風呂場に追いやって、降りたいという一樹を降ろして、そっとカーテンの膨らみに歩み寄る。
そしてそのまま静かにカーテンを退けると、真っ暗な中でスマホを弄っている三女が居た。
「 こら、そんなとこでスマホ触っちゃダメでしょ 」
「 だって、カズちゃん私のスマホ見てくるんだもん 」
「 ならお姉ちゃんが使ってる部屋で使いなさい。そこは目が悪くなるからダメ 」
「 はぁい 」
三女はまだ反抗期じゃないからすんなりと言うことを聞いてくれるが、これで反抗期になったらと思うと、今からかなり苦労が多くなりそうだ。
あれだけ先輩で充電した元気が一気に減り、へなへなとソファーに座り込む。
……と、その時。突然ポケットに入れていたスマホがブブッと振動した。
＜ 勝手にココア入れんな馬鹿 ＞
送り主は先輩だった。どうやら帰り際に入れたココアがバレたようで、笑いながらその文字列を見つめる。
不思議だな。たったこれだけのラインなのに、今日はまだ、頑張れる気がする。
□
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝田 | 作成日時：2021年2月26日 0時
