止めに入る先輩 ページ11
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「 はぁ……立華、山本。その辺でストップ 」
普段は我関せず精神の先輩が、このときばかりは私達の間に割り込んで止めに入ってくれる。
恐らくはこのままだと胸ぐらの掴み合いに発展して挙げ句に殺戮パーティーが開催されるとでも誤解されているのだろう。強ち間違いでないことは黙っておこう。
心優しい先輩に止められればこれ以上喧嘩を続行する理由もない。
私はいつでも投げれるように掴んでいた服から手を離し、山本は私の頭から手を退ける。そしてお互いに向かい合ってニッコリ。今回は見逃してやるよくそチビ。
私たちに和解なんてものはない。あるとしてもそれは一時的なものだ。
いつだって相手の首を狙っているし、隙があれば殺る準備は出来ている。夜道には気を付けな。
「 今度河村さんにウザ絡みしたらその頭割るよ 」
「 奇遇ですね！私も丁度お前の顔面を潰したかったんですよ！ 」
「 はいはいはい、喧嘩両成敗、両成敗。立華、僕たちはコーヒー淹れにいくよ 」
「 私ココア！！ 」
「 はいはい、分かったから 」
先輩に背中を押されながら半強制的に山本から引き剥がされ、二人でオフィス備え付けのキッチンにやって来る。
いつもは一人でせっせと飲み物を準備する空間に先輩が居る。その事実がなんだか新鮮で、私の口角は自然と上がっていた。
こういう展開になるなら、あいつ( 山本 )と喧嘩するのも悪くない。
出来ることなら極力関わり合いになりたくないものだが。
「 はぁ……なんでお前らはこうも仲が悪いわけ？ 」
「 向こうがいけ好かないからです 」
「 の割りには山本が紹介してきたよね、お前 」
「 きっと私が有能すぎたからですね！！ 」
「 あーうん山本の気持ちが今ならよく分かる 」
やかんに入れた水が沸騰するのを待ちながら、ココアの入っていた筈の棚を漁る。
コーヒーは飲む人が多いから下の棚に入っているのだが、ココアはあまり需要が無いのか、かなり高い所の棚に入っている。恐らくはココアを飲むもう一人が須貝さんだからだろう。
あれだけ山本をチビ扱いしたが、私も残念なからチビだ。
普段の生活では小さい身長を生かして「 うふ、私可愛いでしょ？ 」みたいなぶりっ子が出来るけど、こういう場面になればただただ不便なだけ。
くっそ、あと少しで届きそうなのに届かないのがもどかしい。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年2月26日 0時
