第11話 ページ12
鳥も鳴かない、さよも寝静まったころ、俺は部屋で考え事をしていた。
獪岳が、明日から長期の仕事を任される。
十二鬼月が現れたというところへ向かわされるのだ。
俺は他の者に担当を変更して頂こうと御館様に講義をしたがそれも虚しく追い返された。
まあ当然だとは思うが。俺は獪岳が心配で仕方がなかった。
5日も帰ってこないのだ。この屋敷に獪岳が来てから2日以上帰ってこないことはなかったのに。
獪岳は強い。強いが精神力が強くないのだ。
常に彼のことを認め、褒めてくれる人が傍に必要なのだ。
やはり黙って俺が代わりに行こうか。
そんなことを考えていると、部屋の外に人の気配がした。
「師範、よろしいでしょうか。」
獪岳だ。もうすっかり眠っていると思っていたが起きていたようだ。
「入りなさい。何か用かな。」
「明日からしばらくお会い出来なくなるので……その、お話をしに。失礼します。」
襖をあけ眉を下げながら入ってくる。本人も余程不安なのだろう。
口からは何の言葉も出てこない。
ただ心の中では死なないで欲しいという気持ちがグルグルと渦巻いている。
俺はあることを指示した。
「獪岳、自分の枕をもってきなさい。」
獪岳は不思議そうな顔をしてしばらくしたあと、無言で枕を持ってきた。
俺はそれを受け取り、既に敷いてある自分の布団の枕の横に並べて置いた。
そして布団に座った。
「獪岳、おいで。一緒に寝よう。」
そう俺が言うと、開学は戸惑ったように視線をぐらつかせたが、ゆっくりと寄ってきて、「失礼します。」と言い布団に入ってきた。
あかりを消す。
暗闇の中、俺は獪岳を強く抱き寄せた。自分よりも遥かに大きい背をさする。
「獪岳。大きくなったなぁ。」
獪岳は返事をしない。最初は少し体が強ばっていたが、徐々に力がぬけていた。
師範として俺が言いたいことはただ1つ。
「獪岳、死にそうになったら逃げなさい。殺されそうになったら命乞いをしなさい。鬼殺隊としての誇りなんてそんなものどうでもいい。命さえあればどうとだってなるんだ。その身一つ残っていれば、なんだってできる。これを守ると約束してくれ。」
ゆっくり言った。暗闇ではあったが、獪岳は小さく頷いたのがわかった。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2021年9月4日 14時) (レス) id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2021年1月11日 22時) (レス) id: e1c8a072d5 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 続きぃ…続きが…読み…た…い…_(:3」∠)_ (2020年6月25日 2時) (レス) id: a576ecff6a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ - こういう感じの作品…求めてました…ありがとうございます! (2020年5月8日 13時) (レス) id: f998f40160 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがり - 尊い・・・尊い・・・素晴らしい。。もう何度読んだか・・続きたのしみにしています! (2020年4月18日 12時) (レス) id: 43beb87d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤 | 作成日時:2020年2月11日 13時