▼.ふりみふらずみやらずの雨 / エース ページ16
ぱたた、と雨が窓を打ち付ける音と、地面に降りしきる音が重なって溶ける、窓の外のそれが、どこか遠い場所なのではないかと錯覚するくらい、窓と壁で隔たれたこの部屋は静かだ。明かりもついていないその部屋のベッドの上の私達は、だから余計に互いの声ばかり意識して、心が揺さぶられてならない。
悩ましげに寄せられた眉、その下の、私を見下ろす熱の籠った目は赤い。ぎゅ、と指を絡めて繋いでベッドに私を縫い付けた左手はそのまま、右手で触れたエースの頬が思うより熱いから、私は思わず口許を緩めた。
エースは意地悪だけど、私をこうして組み敷いても、無理強いは絶対にしない。そう。
「……エースは、思いの外、優しい」
「え、なに」
「なんとなく」
私のその言葉に、エースはむ、と眉をしかめて少し唇を尖らせる。そして何かを堪えるように目を細め、「好きな子に優しくしちゃダメなわけ?」と何処か拗ねたように呟いた。「ううん」と首を振って、「嬉しい」とエースの赤い髪に指を通す。
「私、エースのそういうとこ、すごい好き」
そう告げれば、エースの息を飲む音が聞こえる。そして、見たことないくらい真面目な顔をして、
「……オレは」
ふとエースの手が私の右手に重なる。そうして軽く握られてエースの口許に運ばれて、エースは目を伏せてその掌に口付ける。そう、まるで王子様のような仕草で。
私はそれから目が離せなくて、息を飲む。
「Aの全部が、好きなんだけど」
唇を私の掌に押し付けたまま、エースは私を見つめてそう囁く。その瞳が帯びた熱にかぁと頬が熱くなって、繋いだ左手を更に深く強く絡められて、体がどくんどくんと脈打ってうるさい。
「……私も」
思わず私が呟くと、初めてエースがいつもみたいにちょっと意地悪な笑みを浮かべてみせて「知ってる」なんて言うから、あぁ私はまた彼に心を奪われるのだ。
ふりみふらずみやらずの雨
[「こんな雨じゃ帰れないからさ」
きっとその言葉が合図だった]
2020/12/8 硝子屋
160人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
硝子屋(プロフ) - 食パンさん» リクエストありがとうございます。ゆっくり更新になるとは思いますが、気長にお待ちくださると幸いです。 (7月11日 23時) (レス) id: bfedb6e9a1 (このIDを非表示/違反報告)
食パン(プロフ) - あのぉ趣味でやってるなら申し訳ないのですが厚かましいお願いです。レズで元の世界に彼女もちの監督生夢主と、本気で夢主を墜とすつもりでいるルクハンをお願いしたいです!※夢主は彼女から離れるつもりはないあと夢主は女の子。これからもほどほどに頑張ってください (7月10日 18時) (レス) id: 1be4b3aa35 (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - ハイドさん» 返信遅くなって大変申し訳ありません……!リクありがとうございます、承りました!ただ、私情によりこれから先更新できる頻度が少なくなってしまいますので、気長にお待ちくださると幸いです……。 (2021年2月2日 20時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
ハイド - 初めまして!リクエスト良いですか?キャラに盛る毒を夢主が奪って飲み込んだらをお願いします!キャラはフロイドでお願いします! (2021年1月31日 11時) (レス) id: 76fb91e4e9 (このIDを非表示/違反報告)
硝子屋(プロフ) - ソーダさん» ありがとうございます〜〜!そう言っていただけるのが何より嬉しいです……! (2020年12月24日 18時) (レス) id: c0a77834dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:硝子屋 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年3月2日 16時