炎柱邸を訪ねる -1 ページ45
***
しばらく経った日のことだ。
任務帰りに珍しく宇随と行き会った。
「派手に久しぶりじゃねえか!5か月ぶりか?」
「ああ、相変わらずだな」
「そういやあ、アレ聞いたか?煉獄がとうとう屋敷を持つことにしたんだと」
「初耳だ。もしや御館様のはからいか?実家住まいじゃあ次の継子も取りづらかろう」
「だろうな。ただいきなりじゃあ生活に不便ってことで、御館様に住み込みの家政婦を都合してもらったそうだ」
要は、お前もそろそろどうだ、という話に繋げたい様子だ。
一瞬、A殿の顔がちらついたが、俺は首をふる。
「家に他人がいるのは落ち着かん」
「へえ、潔癖だなあオイ。
だが煉獄ンとこのお手伝いさん見たら気が変わるんじゃねえか?
派手に美人だったぞ。俺の嫁には劣るが」
「心底興味がない…」
「そう言うなよ!懇親と信頼関係構築も仕事のうちだ!いくぞ!」
そういうわけで、俺は今宇随に引きずられるようにして、炎柱邸を訪ねることになった。
宇随は道すがら、延々と俺に妻のよさを説いてくる。
お前にはいい相手はいないのか、と聞かれ、「それは、恋仲の相手がいるかという質問か?」と聞いてしまったがために、宇随はにやりとした。
「ははあ、なるほどなあ?
お前、恋仲はいねえが一方的な懸想でもしてるんだな?」
「…その想像力は他に活かせ」
「いやいや、悪いことじゃねえだろうが。隠すなよ、地味なやつだな」
***
「おお!宇随に冨岡!よもや本当に来るとは!」
冗談かと思っていた!と快活に笑いながら出迎える煉獄なんかより俺は、奴の隣にとんでもないものを見つけてしまったのだ。
それこそ冗談だろう、という顔で煉獄を見れば、なぜかやや誇らしげな顔で言う。
「身の回りの世話をお願いしていてな!Aさんという!」
当たり前だ、知っている。
「と、冨岡様、お久しゅうございます」
ぺこりと頭を下げるA殿に、煉獄はよもや知り合いか、と尋ねる。
完全に硬直している俺を後目に、実は、とA殿は煉獄にあらましを説明した。
「…要は、冨岡がAさんの恩人ということか!」
「派手に面白そうな話じゃねえか、聞かせろよ」
「杏寿郎さん、立ち話もなんですから、奥へ―――」
A殿が、話し込みそうになる俺たちを気遣ってか、煉獄のほうを見上げながらそう囁く。
白の割烹着が可憐である。
―――ん?
「きょ、―――杏寿郎さん?」
思っていたよりも間抜けな声が出た。
***
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時