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持つべきものは -2 ページ30

***


ひと冬もたない、ということでれば、急ぎ取り替えなければならない。
もう一度、胡蝶の名前でも借りて文でも飛ばそうか。

「行けばいいじゃないですか」

しかし、文の表書きを頼もうと蝶屋敷を訪ねると、胡蝶はすげなく断って言った。
…ちなみに、隊士は定期的に蝶屋敷を訪ねて、健康状態に問題がないか、薬は足りているか、妙な怪我をしていないかなどを確認されるので、あて名書きのためだけに訪ねたわけでは断じてない。
…断じて。

「…これのためだけにか?」

「これのためだけに、です」

胡蝶は、俺の腕を妙なふかふかで挟みながら言った。
しゅこしゅこと何かを握りながら、胡蝶は続ける。
傍らの胡蝶の弟子に聞けば、血圧を測っているらしい。
鬼殺隊は肺と心臓を酷使するので、心臓が弱くなっていないかを定期的に測らなければならないのだそうだ。

「ハイそのまま動かないでください。
 冨岡さん、あなたが訪ねたらいいと思ったのは、別に文に小細工をするのがイヤだから、とかではありませんよ。
 …Aさんのお父様、とうとう藤の樹を伐ってしまったようです」

胡蝶が唐突にA殿の名前を出すので、動くな、と言われたそばから俺はガタッと腕を動かしてしまい、そばに控えていた胡蝶の弟子にぐっと抑えられてしまう。

「前に訪ねたときに聞きました。藤のご紋も下ろされるとか。
 これであの家に鬼殺隊が出入りすることもなくなったのでしょうね」

尤も、Aさんはあの家を近く出るので、まあ関係ないといえば、ないのですけど。
胡蝶は、やや挑発するように続けた。

「嫁ぎ先に、気を付けるように言えばいいのではないか?」

俺の言葉に、胡蝶は首を振る。

「婚家はもっと期待できないでしょう。
 鬼殺隊を信じていないどころか、…おそらくは鬼の存在自体を信じていない」

しゅう、という音とともに空気が抜け、圧迫されていた腕が楽になる。


***

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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時

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