屋敷の主人 -2 ページ9
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母屋へ戻ると、花殿が待っていた。
「鬼狩り様、こちらでございます。」
案内されるまま、奥の座敷に通される。
花殿が「旦那様、奥様、鬼狩り様をお呼びして参りました。」と声をかけ、ふすまを開けた。
「……あなたが、冨岡殿か？」
座敷に進むと、恐らく屋敷の主人なのだろう、中年の男性が半腰になり、
「その節は、Aの命を救ってくださった鬼狩り様と伺っております。
ずっと、御礼を申し上げたかった……！」
そう言って俺の手を取った。
「わたくしからも、改めて御礼申し上げますわ。」
ご母堂も指をついて頭を下げる。
ご母堂の後ろに控えていたA殿もそれに倣った。
「当然の責務を果たしたまでだ。
どうか頭を上げていただきたい。」
俺はなんとなく決まりが悪くなり、主人の肩に手を触れる。
「ご覧の通り、我が一族は藤の御紋を掲げておりまして、
つまり前の代にも鬼狩り様に命を救われております。
まさか、当代においても救われることになろうとは、なんと幸運なことかと。」
なるほど、藤の家紋を掲げることになったのは、この主人の父親が鬼から助けられたことが契機だったようだ。
A殿が言っていた藤棚を美事に育てた祖父というのは、この主人の父親なのだろう。
……幸運、と主人は言ったが、果たしてそうだろうか。
祖父と孫が同じように鬼に襲われるとは、珍しいこともあるものだ。
どうかゆっくりしていってほしい、と主人が言ったところで、ふすまが細く開かれた。
「旦那様。鬼狩り様がお尋ねでございます。」
「おや、来客の多いことだ。
花、中座敷へお通しなさい。
後ほどご挨拶に向かおう。」
どうやら、他の隊士が羽を休めに訪れたらしい。
俺はここらがちょうど頃合いと思い、立ち上がった。
「A殿、夕餉の時間まで、俺は少し外に出る。
明朝、こちらを出ようと思っている。」
名残惜しさを感じないでもなかったが、
他の隊士が訪れたとあっては、賑やかにならないとも思えない。
『もうご出発されてしまうのですか？
……残念ではございますが、畏まりました。
ご出立の前にはお声かけくださいませ。』
それを聞いたA殿はまた、はかなげに眉を下げた。
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (
レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます！ (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です！ずっと待ってました〜っ！！これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イトカワ | 作成日時：2020年4月19日 22時
