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汽車旅 ページ41

***


ゴトン、ゴトン、と規則正しい汽車の揺れに合わせて、彼女の頭が揺れる。
俺は肩に寄りかかるそれをどうしたらよいのかわからず、されるがまま、石のように固まって座っている。
A殿の生家からしばらく歩いて街へ下り、蝶屋敷へ向かうため汽車に揺られている。
しばらくはしゃいでいたA殿がまったく喋らなくなったと思ったら、寝入ってしまったようだった。
無理もない、鬼に襲われ、嫁入りが破談になり、おまけに生家を追われたのだ。
精神的な疲労たるや、限界だったのだろう。
ここまで涙一つ見せなかった彼女を、すこぶる気丈だと思った。

―――お嬢さん、を、卒業しないといけませんからね、―――

汽車の駅までの道中、連れだって歩きながら彼女が言っていたことを思い返す。
幾分乱暴に括られた長い髪が、彼女が身じろぎをした拍子にさらりと零れ落ちた。

「…おかあさま」

彼女が、ほんの小さな声で、うなされるように呟く。
窓際に座った彼女のまぶたの上に、通り過ぎる街の灯が光の粒になって、ぱらぱらと転がっていく。
俺はせめて、起こさないようにだけ気を付けて、そっと腕組みをすると、背もたれにゆったりと背中をつけて、目を閉じる。
最寄りまではまだかかる。
胡蝶宛に飛ばした鴉のほうが先に着くだろう。


***

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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時

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