［完］黒死牟邸に居候してます (ページ35)

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鬼狩りと遭遇した夜 ① ページ35

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『イヤーーーッ！！！寄るな寄るな！！！』

満月の夜のことである。目を覚ますと黒死牟さんがいなかったので、私は猗窩座さんのところにでも行くか、と夜道を歩いていた。

ゲッ！雑魚鬼だ。

道の先に、棒立ちする鬼の姿が見えた。
これは未だに謎なのだが、格の低い鬼であればあるほど、私が鬼であることがわからないらしい。
その鬼は、こちらに気づくと、咆哮をあげながら血まみれの両手で襲いかかってくる。

ギャーーッ！きたない！！

私はとっさにかがんで初撃を避けたが、鬼はそのまま二撃目に入ろうとしている。
気づけよ～！私鬼だよ～！無益だよ～！
こちらの訴え虚しく、鬼の追撃が私の顔にもろに入った。

ーーーいてえ！！

鋭い爪が口を裂くように薙ぐ。
最悪だ、いまの攻撃でこいつの手についてた血を舐めてしまった。

「ウワーーーッ！！！やめろーーー！！！」

突然、背後からそんな声がして、あれっと思って振り向くと、人影がひょいと私を飛び越え、次の瞬間には鬼の頭がゆっくりと飛んで行った。

「イヤーーーッ！！怖い！！ききき君、だだだ大丈夫！？」

『……ギャーーーッ！！！』

鬼狩りだ！私は一目散に逃げ出した。まずいまずい、しかも血を舐めてしまった。少量だからまだぞわぞわはきていないが、猗窩座さんの屋敷まで持つだろうか、そんなことをいっぺんに考えながら走ったものだから、自分の足につまずいて転んだ。いやいやバカなの！？日頃から運動しておけばこんなことには。
当然、私より脚の速い鬼狩りは、とうに追いついて私を助け起こしさえする。

『イヤーーーッ！！！寄るな寄るな！！！』

「ギャーーーッ！！！声がでかい！！！」

私の叫び声と同等のうるささで、鬼狩りも叫んだ。素っ頓狂ななりの鬼狩りだ。なんだそのたんぽぽみたいな頭は。春の野山か。