［完］黒死牟邸に居候してます (ページ11)

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夜の散歩 ④ シデムシの幼虫ページ11

じり、っとまぶたが灼けて飛び起きると、今にも日が昇りそうだった。
血を飲んで、上等な鬼を二人もいただいて、今日の私はいつもと違う。
こんなに速く動けたのかというほどの超スピードで、暁の直前、なんとか床下へ滑り込んだ。
黒死牟さんの気配はない。
またどこかよくわからないところへ行っているんだろう。
留守を守るのも私の仕事だ。
私は、いそいそと床板を外し、黒死牟さんのいつもの居室に入り込んだ。

ーーーすや。

そして、部屋の真ん中で寝る。

＊＊＊

べんっ！

『ーーーんガッ！』

心地よい惰眠を断ち切るように、琵琶の音が響く。

『む、無惨様！』

私はこんどこそ、名前を叫んでひれ伏した。
ちなみにこれは上弦の陸の、女の方のマネだ。
しかし、間を空けず二回もあのお方に会うとは、勘弁してほしい。
あっ、うそうそ、大歓迎です。

私の頭を読んでいるあのお方が爪を見せびらかしてくるので、私は平身低頭、体を投げ出し媚びに媚びる。
媚び柱だ。

「よだれを拭け。」

慌てて口元を拭う。
あのお方は、氷のような眼差しで問うた。

「A草、お前は猗窩座を泣かせたのか？」

『泣かせてません！
あっ、鳴かせはしたかも……？』

「お前は私の言うことを否定するのか？」

『ほらこれだよ！
もう最初から、なんの罪もない猗窩座を泣かせてお前はひどいやつだ、って断罪してほしい！』

「なんの罪もない猗窩座を泣かせて、お前はひどいやつだ。」

『言うんだ！？』

「猗窩座の気配がひどく乱れて脆くなったと思ったら、やはりお前か。
いいか、お前のような、雑草以下の、水しぶき一粒ほどの価値もない駄作が、
比較的上出来な鬼である猗窩座の神経を乱すな。
次同じようなことがあれば、お前の頸を玉壺に活けるぞ。」

なんなの……。
無惨様、猗窩座のこと大好きすぎるし、今まで散々ねぶられてきたのに何のフォローもされていない黒死牟さんがかわいそう。
それに、水しぶき一粒ほどの価値って表現が詩的すぎ。
ちょっとロマンティックですらある。

玉壺に活けられるのは(玉壺、生理的に無理なので)嫌なので、私は額をこすりつけた姿勢のまま、
誠に申し訳ございませんでした！！！
と大声を出した。
大きい声だしとけばなんとかなると思ってる。

あのお方は、フン、とシデムシの幼虫でも見るような目で睨め付けると、琵琶の音とともに消えた。

『ーーーンガ、』

私は再び、黒死牟さんの居室で豪快に目覚めた。
夢？いまのって夢？