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咄嗟に頭を抱え、私は一層小さくうずくまった。咽せるほどの土埃と火薬の臭いが辺りを包んで、私と男の間を隔てている。目線だけ上げて様子を窺えば、土埃の薄膜の向こう、予想に反して無惨の顔にはわずかな焦りが浮かんでいた。

「……虫けらどもが」

苛立った様子で、口の中に呪詛を吐く。
彼は踵を返し、倉から屋敷へ続く奥廊下に駆け込んだ。はっとして見上げる。崩れた土壁から覗く屋外、まだ黄昏には早く、黄色い太陽の光が灯り取りから差し込んでいた。

「動くな!」

突然の怒号に体が強張る。土埃を引き裂くようなその声に足音がバラバラと続いて、首をほんの少し傾いで振り返れば、いく人もの男が殺気だった目を私に向けていた。そして彼らの幾人かは、たった今、鬼の男に食い散らかされた女の残骸を見て、悲痛な声を上げた。

「…ミヤノ隊士!…あぁ、」
「畜生、斥候など出すべきじゃなかった!」
「まさか彼女が敗れるなど…」

そして目線が再び私に注がれる。彼らの目に、私は恐ろしい鬼に映っているのだ。
ガチャリ、とどこからか刀に手をかける音がする。
だが先頭の男がさっと腕を上げて制した。

「落ち着け。彼女は鬼ではない」
「ほかに居るはずだ。探そう」

彼の号令で、死んだ女と同じ袴を纏った男たちの視線が一斉に奥の渡り廊下へ続く扉に注がれる。

彼らを行かせてはならないと思った。
無駄死にすることが目に見えているからだ。
だってあんな、まるで砂の山を崩すように人間の体を壊せるのだ。
彼らーーーきっと「鬼狩り」と呼ばれた者たちだろうーーーがいかに腕が立つ者たちであろうとも、私にはわずかの勝機も見えなかった。

だが私の喉からは、行くな、が出ない。何としてでも止めたいのに、咄嗟に動くのは体だけだった。

「…何だ」

闇雲に手を伸ばして、掴めるものを掴む。号令をかけた男の白い羽織だった。
私は激しく首を振り、行ってはならないと、行かせてはならないと伝えようととする。
気づけばぼろぼろと涙が溢れた。


「行くなと言いたいのか」

頷く。

「それはお前があれを庇いたいからか?」

激しく首を振る。

「あれが、俺たちよりも強いからか?」

深く頷く。何度も、懇願するように。
それを見て、彼の人は鼻白んだ。

「そんなことは瑣末なことだ」
「そこに鬼がいるなら、滅殺するのみだ」

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せいた(プロフ) - とても面白かったです!話せるようになった主人公が開き直る感じがすきですw続きが気になるますが完結どの事で残念ですが、お疲れ様でした! (2022年10月22日 2時) (レス) @page40 id: 4527c8b3f3 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - みおさん» 嬉しいです〜読んでくださりありがとうございます!いつも終わりどころって迷いますよね… (2022年8月28日 0時) (レス) id: 02e548a085 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - お、終わりなんですか…?!この作品ほんとに大好きです!!まだ終わる予定は無いのでしたら(?)主様なりのペースで更新頑張ってください!!応援してます!! (2022年8月28日 0時) (レス) @page39 id: 98c132f21e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2022年8月18日 2時

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