恋だとか愛だとか【エース・トラッポラ】

第６話 ページ6

「監督生と喧嘩したのか？」

「してないけど」


告白以来のエースとの初めての会話がこれだった。

あの後、監督生を取り巻く奴らが俺を責め立て大騒ぎになり、学園長が止めに入って無理矢理に収拾をつけた。


「なんであんな事が起きたんだよ。争い事が起きるようなことは避けるか逃げるタイプのお前が自分から起こすなんて考えられないんだけど」

「………っ」

「もしかしてオレが関係してんの？」

「違う…！」


その言い方は関係してるって言ってるようなもんだ。

さっきまで距離があったはずなのに、いつの間にかに目の前にエースが立っていた。反射的に距離を取ろうと後退りしようとしたが手首を掴まれた。


「あの返事、聞いていい？」

「………っ」


エースが手首を掴む力がだんだんと強くなる。

言葉を間違えたら終わる。なんて言えばいいんだ。エースを傷付けずに円満解決する方法はないのか？


「俺は…エースを恋愛対象として見てない」

「そうかよ」

分かりやすいほどに態度が悪く、不機嫌な顔をする。


「監督生はエースが俺のことを好きって気付いていたらしい。俺は全く気付かなかったけど」

「まじ？結構隠せてたと思ってたんだけどな、バレていたのか」

「その次に貴方もエースのこと好きでしょて言われたんだ。お前からすると俺はそう見えていたのか？」

「…まぁ、ちょっとは」


監督生が言った言葉、全部当たってんじゃん。それにキレていたのか。俺は知らず知らずエースに思わせぶりな行動をしていたのか。

気付いた今もエースと他の人を比較してもそこまで態度に差ないと思うんだけど。

思わずエースの顔を見る。相変わらず無表情だった。

気づいたら両手首を掴まれていた。


「そもそも俺のことを好きだなんて信用出来ない。普通は監督生を好きになるだろ！」

「は？なんでここで監督生が出てくんだよ？監督生監督生ってお前、何が言いたいんだよ」

分かりやすいくらいにエースは眉を顰める。

「監督生は高嶺の花すぎて付き合えると到底思えないから、俺くらいだと手に入りそうだからワンチャンやれるとか思ってんの？」

「意味わかんねぇんだけど、なんで監督生好きになるのが当たり前って思考なわけ？」


収拾つかなくて喧嘩別れみたいになってしまった。エースは１人で所属の寮へと帰る。


「振られる以上に好きだと信用されないの辛すぎだろ」

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