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それは数刻前に遡る。
「あれ、エミさんやん。こんな時間にどないしてん」
「あぁ…大先生。いや…ちょっと休憩に、」
深夜の城内は静かで心地良い。
以前から苦手な書類捌きに疲れるとこうして夜中にフラフラと城を歩き回ったりしていた。まぁ前科持ちの為使用人の棟には近付くなと言われているし何故か棟同士の渡り廊下にはセンサーが取り付けられているし、夜中と言えど情報部の目は休みなく光っている為本当にただの徘徊と化しているのが最近の夜中のルーティンなのだが。
いつも通り喫煙室で一服してから寝るかと廊下の突き当たりにこじんまりと造られたそれに入ると数分とせずに珍しい客が顔を出した。無害そうな顔によらずお気に入りの銘柄を咥えながら入ってきたエミさんは俺に気付くとまたですか、と呆れたように呟く。珍しいやん、と声を掛けるもその後は続かずエミさんは自身の煙草に火を付けた。静かすぎにも感じるエミさんに視線をぶつけていれば何か？と首を傾げられた。嫌な空気を漂わせるエミさんの煙草の先が赤く輝く。
そういえばこの間街で襲撃にあったと聞いていたがあれ以降様子が可笑しい、とゾムがぼやいていたのを思い出した。何でもずっと保管庫に籠りきりで変な魔術書を読み漁っているのだとか。いつも通りちゃうん、なんて適当な返しをした気がするがあのゾムが狼狽える程だし、且つこんな時間に起きているのも確かに可笑しい。まぁエミさんが隠し事とか無さそうやけど。
「エミさん、最近何しとんの。ゾムが心配しとったで」
「いや…少し気になることがあって調べ物を、」
「……エミさんらが聞いた呪いがうんたらってやつ？」
エミさんに遠回しは効かんなと気になっていたことを聞けばエミさんはあっさりと答えてくれた。特に何かを隠しているわけではなさそうだった。
調査に携わった連中から報告は受けていたが聞けば聞くほど謎に取り巻かれた彼女、いや隣国の存在が浮き彫りになる。自分の人生の中であの国の歴史なんざ疑ったことも無かったがあの顔の下で何考えてるかほんま分からんもんやなぁ。
エミさんは俺の問いに頷くと気になる文献があって、と言葉を零す。差し出された罫線を無視して乱雑に書き殴られたメモには黒魔術、それに傾倒する人間、関係する本や悪魔等がつらつらと書かれていた。その中でも特に、雑に丸で囲われた一文が妙に目を引きじ、とそれを見つめてしまった。
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終わり
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ヒスイ(プロフ) - 無月さん» 一気見...！ありがとうございます。サブタイトルから内容まで触れていただいて有難いです...多忙につき更新頻度が遅いですが最後までお付き合いいただけると嬉しいです。 (2020年12月24日 7時) (
レス) id: dec598601a (このIDを非表示/違反報告)
無月(プロフ) - 初コメ失礼します｡ストーリー性が好きで一気見してしまいました｡一つ一つの題名がおしゃれでそれも見るだけでも楽しいです｡威厳のある総統様や嫉妬が混ざった総統様、伏線や色々なことがあり、とても楽しいです｡投稿体調が崩れない程度に頑張ってください (2020年12月23日 15時) (レス) id: 386a561804 (このIDを非表示/違反報告)
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