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「……あの」
「あ?」
もじもじと身体を不自然に揺らしながら、Aは消え入りそうな声を発する。それを無事キャッチした五条は、首を僅かに傾げながらその続きを待つ。
教室の開いている窓から吹く風がAの髪を揺らすから、ほんの少し赤く染まった彼女の頬が五条からはちょうど見えなかった。宙を舞うAの柔軟剤の香りがあまりに女の子のもので、五条は改めてAを意識することとなる。
「このタイミングで言うのもあれだけど、今度、2人でご飯とか……どうかな?」
「……!?…………!?!?ご……?」
ぱくぱくと口を開いては閉じてを繰り返す五条は、サングラスがずるりと落ちそうになってしまう。二度見ならぬ二度聞き。脳内で再生されたAの言葉を二度噛み砕き、ようやくその言葉の理解をした五条は、日本語ではない何かをその口で紡いだ。
その様子を心配そうに見守るAは、眉を八の字にして五条を覗き込む。
「いっ、嫌なら全然……」
「行ってやってもいいけど!!!」
その続きは言わせねえ、と言わんばかりに食い気味で答えた五条は、せっかくのチャンスを逃すことだけは許さなかった。自分とご飯に行きたい理由など分からない。しかしここで下手に話題を逸らすよりは、了承した方が確実であると、この短い時間で五条は判断した。
「いいの…?本当に?」
「俺は忙しいけど、まあ時間を空けてやらねえこともねえ」
「……ふふっ、有難う。嬉しい」
Aに対しては弱すぎる五条であるが、このAの表情が彼にとって最大級の弱点だった。この笑顔が可愛いと思うのはもちろんのこと、自分の発言で笑ってくれることが何よりも嬉しかった。
しかし素直に“可愛い”などと言えるはずがない五条は、やはり舌打ちをしながら後頭部をかく。その赤く染まった顔を悔しそうに歪めるのが面白くて、また可愛くて、Aは再びくすりと笑った。
「五条君って面白いね!」
「はっ、はあ!?あんま調子乗ってっと頭潰すぞ!!」
「ぎゃっ!!」
五条はその大きな手でAの頭を鷲掴み、ぎゅっと指に力を入れた。痛がりながらも楽しそうに笑うAを見て、彼の口角は自然と上がってしまっていた。
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叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね!!! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐー | 作成日時:2021年5月18日 1時