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「つーか、さっきから誰のこと言ってんだよ。俺のこと好きな女がいるわけ?」
「えー、それはさすがに言えないよ。内緒」
気づけば皿の上のパスタは最後の一口になっていた。Aは五条の話に耳を傾けるも、意識は完全に食へと向けられている。もぐもぐと口を動かしながら五条から視線を逸らすと、彼の僅かにこちらへ前のめりになりながら、ぽろりと言葉を漏らした。
「じゃあ例えば俺がそいつと付き合ったらどーすんの」
「え?」
その真剣な声色に、Aはつい逸らしていた目を再び五条へと向けた。彼女から漏れた一文字はあまりにも情けなく、ふよふよと空中を漂う。
どうすると言われても。返答に困る、とAは思った。
下手に”自分の親友とその好きな人が付き合ったらとても嬉しい”なんて言ってみろ。自分の親友でなおかつ五条と知り合いの人間など、この世に1人しかいない。それでは硝子が五条を思っていることがバレてしまう。
この数秒で、Aは頭を必死に働かせた。結局、ぽつりと答えを弾き出した。
「応援する、かな」
「いや応援すんなよ!もっと他に思うことないのかよ!」
「えぇ……」
応援する。それ以外ないに決まっている。
ーーー本当に?
Aの脳内に響くのは、一体誰のものだろうか。紡いだ言葉に釘を刺す、自問自答の言葉を発した声が、あまりに自分の声に似ている気がしたとAは思った。
五条と接して距離を縮めているのは、自分のためではなくあくまで硝子のためだった。こちらは紛れもない事実。しかし、Aの心が少々揺れ動いていることも事実だった。
溶けた氷がグラスに当たり、カランと音を立てる。その後にハッとしたAは、水滴が滴るグラスを手に取り口元へとゆっくり傾けた。
冷たい水は心を平静にしてくれたようで、一息ついたあと、Aは攻めの質問を口にした。
「五条くんはさ、彼女作りたいとか思う?」
「…………さあな」
じっと見つめられてからのこの返答に、Aは不覚にもドキッと心臓を高鳴らせてしまった。あまりにも含みのある言い方だった。やや憂いを帯びた五条の瞳がゆっくりと伏せられるのを見て、Aは目が離せなくなってしまった。
作る気がなければ断るはずだが、この濁し方である。つまり、五条は彼女が欲しいのだと名探偵Aは閃いた。彼女が欲しいことも分かり、なおかつ好きなタイプまで知ってしまった。これはもう、Aにとって大大大進歩だった。
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叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね!!! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐー | 作成日時:2021年5月18日 1時