22 ページ22
.
「ごめん!まさかそんなに怒るとは思わなくて!」
「マッッッジでありえねえこのクソ女!!深い意味はねえとか何だよ!!」
「いや、腹黒いこととか何も考えていないよっていう意味で、そんな怒らせるようなことじゃ……」
「もう知らねえAの話なんか聞いてやるか」
完全にそっぽを向いてしまった五条を前に、Aは苦笑いが止まらない。確かに先ほどの言い方では、“仕方なく仲良くしている”という意味に捉えられてしまう可能性もある。正直なところそれも正しくはあるが、今Aが五条との距離を縮めようとしているのは硝子のためだけではなく自分のためでもあった。
喉は乾いていないのに、水滴が周りにいくつもついたグラスを両手で持って水を喉に流し込んだAは、言いづらそうに俯きながらそっと口を開く。
「さっきのは無神経だったかもしれないけど、五条くんと仲良くなりたいってのはちゃんと本心…、だよ」
俯いているためその顔は見えないが、髪の隙間から見えるその小さな耳は赤く染まっていた。それだけでAの今の表情が想像できてしまった五条は、ごくりと固唾を飲む。
「っ……、んでいつも俺ばっか余裕ねえんだよ」
「ん?よ、余裕……?」
「うるせえ!!仲良くしてやるよしゃーねえから!!」
これには、喧嘩になるのではないかとハラハラしていたお隣の客もにっこり。くすくすと笑うAと、それに対して怒鳴り散らす五条は見慣れた光景だった。
話も一区切りついたところで、それぞれが注文したものが運ばれてくる。Aは目の前に置かれたパスタをフォークに巻きつけて、ぱくぱくとそれを口に運んだ。そのたびに口角が上がるのを、五条は優しい表情で見つめていた。5口ほど食べ進めた後、Aは僅かな緊張を瞳に宿して五条に質問を投げかけた。
「五条君の好きな女の子のタイプって、どんなの?」
この問いは、今回Aが硝子から課せられたミッションのゴールだった。これに対する答えが返ってきたらそれで終わり。Aと五条は同期であるため今後も一定の交流は必要だが、その範囲を超えるようなものはもう必要なくなる。
これでようやく、苦手な人と話すことから解放される。清々しい気分になるはずだったのに、Aの胸から黒いもやもやは消えてくれなかった。
1465人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね!!! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぐー | 作成日時:2021年5月18日 1時