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「昨日は悪かったな」
「…………あー」
五条が言いづらそうに発したその言葉を理解するのに数秒を要したAは、何とも気の抜けた返事をした。世の中には、思い出さない方がいいこともある。昨日の出来事は、それに該当しているのではないかとAは考えていた。
「そんなに気にしていないから大丈夫だよ？」
「……」
正直、気にしていないわけがなかった。友人以下である男に組み敷かれ、直接肌を触られたのである。それはもう、瞬きをするたびに五条の体温すら思い出してしまうほどの衝撃だった。
とは言うものの、気にしていると答えれば気まずい空気が二人の間を漂ってしまうことは、考えなくても分かることである。Aは五条に気を遣って“気にしていない”と答えたのだが、彼の顔は歪むばかりだった。掴まれているAの手首が、ぎゅっと締まる。
「少しは気にしろよ。バカA」
「それは、どういう…」
その続きを聞こうとした時。Aの視界に入り込んだのは、女子高生の間で流行っているおしゃれなカフェだった。休日の昼時であるからか、外にも数組が並んで待っている。
“あ、着いた”と斜め上から降り注ぐ声に、先ほどの問いの答えを聞くタイミングを逃してしまったとAは思った。しかし先程の五条の発言に、深い意味などないだろうと判断したAは、自分の心の中だけで話を完結させた。
…本当は、その問いの続きを口にしてしまえば、何かが変わってしまうかもしれないと悟ったから。
「五条くんが行きたかったところはここなの？」
「文句あんのかよ」
「…いや、意外だなって…っ、思って…ふっ、ははっ」
我慢できずに吹き出してしまったAは、目尻に涙を溜めながら目を細めて笑い続ける。五条のいかつい見た目と刺々しい態度から、甘いものは苦手なのだと勝手に決めつけていたAにとって、彼がカフェを選んだことがどうやら最高に面白いらしい。
最後尾に並ぶと、前の女二人組がちらちらと五条を見つめながら顔を赤らめていた。それにつられたAは、自身の隣に立つ彼をじっと見つめる。
(確かに五条君ってイケメンだよね)
そんなことを考えながらAが向けていた視線に、どうやら五条が気づいたらしい。彼は眉と目をキッと釣り上げて、人差し指をAに向けながら叫んだ。
「こ、こっち見んなよブス！！」
「そんな赤い顔で言われても」
ほんと照れ屋さん。なんて心の中で呟くAであるが、彼が顔を赤く染めるのはいつだってAの前だけだということを、彼女は知らないままだった。
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叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (
レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか？できれば五条悟オチでお願い出来ますか？続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります！！またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります！！またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね！！！ (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぐー | 作成日時：2021年5月18日 1時
