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 “俺が行きてえとこ行くから”と、この辺りのマップやらカフェやらが掲載されている雑誌を開きながらAの一歩前を歩くのは、何を隠そう俺様何様五条様である。行き先を特に決めていなかったAにとっては、自分から行きたいところを提案し、加えて案内までしてくれるのは有難いの一言に尽きる。


(さすがスタイル抜群な五条君……。一歩が大きい)


 Aの一歩と五条の一歩ではかなり幅が違う。五歩も歩けば二人の距離はすぐに遠ざかってしまう。置いていかれないように小走りになりながら、Aは五条の背中を必死に追いかける。
 これが初デートであり、恋愛に関しては不器用な五条は、相手の歩幅に合わせて歩くことなど考えてもみなかった。ちらりと振り返った時に少し息を切らしながら自身についてくるAを見て初めて、“やらかした”とその顔が青ざめる。


「おっそ」
「五条君がはやいんだよ!」


 しかし口から出るのは悪口ばかり。本当はこのようなことを言いたいわけではなかった。
 今から歩くペースを落とすのは不自然だと考えた五条は、この場を切り抜ける方法を必死に捻り出す。思いついたものといえば、非常にベタなアレである。



「…………ん」
「ん?」


 五条は前を向いたまま、ぶっきらぼうに手をAの方へと差し出す。前もこのようなことがあった、そうAは思った。言葉が足りない五条には毎度悩まされるが、今回も彼が何を言いたいのかAには分からない。前の“ん”は携帯を出せという意味であったが、さすがに今のは違うだろう。そんなことを考えながらAは首を傾げた。


「相変わらず察しが悪ィな!!手出せよ!!」


 五条がAの方へと振り返って叫ぶと、街行く人がびくりと肩を揺らして視線がこちらへ向く。耳まで赤く染めて声を荒げる彼の姿はどこか中学生のようで、Aは心の中で笑ってしまった。
 “はい、これでいい?”と彼女が出した手ではなく、その手首を握って五条はぐいっと誘導していく。これにはさすがのAも目を見開いた。


「次からは俺が説明する前に出せよ!分かったな!?」
「は……、はい……」


 どうやら次があるらしい。それだけで緊張してしまうのは、相手が男の子だからか、はたまた五条だからか。
 繋がったそこからは、五条が持つ熱がじわじわと自身の身体に浸透してきているようで、Aは体温が僅かに上がったような気がした。

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叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね!!! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぐー | 作成日時:2021年5月18日 1時

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