検索窓
今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:227,264 hit

18 ページ18

.


 相手は硝子の想い人。これは抱いていい感情ではないということを理解しているAは、忘れようと必死に目を瞑って夢の世界へと旅立っていく。幸いにも彼女は、眠れば大抵のことはリセットされるという楽観的な人間だった。

 次の日は寮の入り口で待ち合わせとなっていた。落ち着かないため早めに出てきていた五条は平静を装うために、ホーム画面のまま意味もなくカーソルボタンを押していた。それは、出かけることに対して舞い上がっている気持ちを悟られないようにするためである。
 集合時刻5分前となった時、鈴を転がすような透き通った声が五条の右耳から入り込み、その全身を巡る血液の温度を僅かに上げた。



「ごめん!待った?」
「くっっっそ待ったわ。おっせえ……、な……」


 声が聞こえた方向に目を向けると、ふわりと巻かれた髪が風に吹かれて靡いているのが五条の視界に入る。普段は制服姿にただ櫛でといただけの状態の髪なのだが、今日は雰囲気がガラリと変わっていた。
 若干透けたバルーン袖のブラウスにしっかりとした生地の台形スカート。レザーの小さなショルダーバックを斜め掛けしてこちらへと近づいてくるAに、五条の喉がごくりと上下に動いた。いつもAの姿を目で追っては身体を熱くさせる五条であるが、滅多に見ることのない彼女の私服姿の破壊力は言葉にならない。


「かわ……じゃなくて、お前脚見せすぎだろ!お゙っえー、きんもっ」
「これくらい、普通だと思うけど……」


 素直な感情が一瞬飛び出るも、すぐに訂正されるそれ。結局五条は、思春期には抗うことができなかった。AはAで、相手が五条であるから目一杯おしゃれをしたわけではなく、普段からこのような格好で街へ出掛けていくため特段傷つくことはなかった。


「五条君はスタイルがいいから、どんな服でも似合うね」
「そりゃ俺様が着るんだから当たり前だろ」
「ははっ、確かに!」


 Aに褒められて上機嫌な五条は、得意げに鼻を鳴らしながら髪をかき上げる。さすがは美丈夫。どのような仕草も様になっていた。
 五条は自身の隣に立つAに目を向けて、頭のてっぺんから足の爪先まで一通り眺め、その綺麗な形の唇で言葉を紡ぐ。



「……Aはもっと芋くせえジャージみたいな服が似合うと思うぜ」
「え、それは嬉しくないな」


 “可愛すぎるから俺以外のやつに見せんな”
 彼なりにそれを伝えようとした結果、結局悪口になってしまうのであった。

19→←17



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (557 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1465人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

叶華(プロフ) - 更新ありがとうございます。とてもとても嬉しいです。これからも応援しております (2023年4月29日 2時) (レス) @page28 id: 2f3b00e51a (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2022年7月5日 14時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
chi(プロフ) - めちゃくちゃ面白いのにここで終わりなんですね(T^T)続きが気になります!!またの更新楽しみにしています (2022年6月10日 13時) (レス) id: d0808ae4c9 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれ - 面白いですね!!! (2021年7月16日 21時) (レス) id: 165d0fbcd6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぐー | 作成日時:2021年5月18日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。