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「神様も酷いことするね。それでは兎はまるで晒しモノじゃない」
「そういう話じゃないんだが」
「兎も兎。そうやって自己犠牲の精神を見せれば神様に認めてもらえるだろうという計算が見え透いて、浅ましいよ」
「そういう話じゃ絶対にないんだが」
「いずれにせよ、僕辺りには分からない話だね」
そう言って。
着かけた新しい上着を、再び脱ぎ出す相川。
「……お前、実は自慢の肉体を私に見せびらかしたいだけなの?」
「自慢の肉体だなんて、そんなに自惚れてないよ。裏返しで、しかも後ろ前だっただけだよ」
「器用なミスだね」
「でも確かに、服を着るのは得意じゃないの」
「子供みたいな奴だ」
「違う。重いの」
「あ」
迂闊だった。
そうか、鞄が重いなら、服だってそうだろう。
十倍の重さとなれば、服であれ、馬鹿にならない。
反省する。
気遣いの足りない__不用意な発言だった。
「こればっかりは、飽きることはあっても慣れることはないな__けれど、意外に学があるんだね、阿良々木さん。びっくりしたよ。ひょっとしたら頭の中に脳みそが入っているのかもしれないね」
「当たり前でしょ」
「当たり前って……あなたのような生物の頭蓋骨に脳味噌が入っているというのは、それはそれは、もう奇跡のような出来事なんだよ?」
「酷い言われようだなおい」
「気にしないで。当然のことを言ったまでだよ」
「この部屋の中に死んだ方がいい奴がいるみたいだね……」
「?保科先生ならいないよ」
「お前今尊敬すべき人生の先導者である担任の先生のことを死んだ方がいいって言ったのか!」
「蟹もそうなの?」
「え?」
「蟹も兎と同じで、火の中に自ら飛び込んだの?」
「あ、ああ……いや、蟹の話は知らない。なんか由来があるのかな。考えたこともなかったけど……月にも海があるからじゃないの?」
「月に海はないよ。得意顔で何を言っているの」
「え? ないの? なかったっけ……」
「天文学が聞いて呆れるね。あれは名前だけだよ」
「そうなんだ……」
うーむ。
やはり、本当に頭がいい奴には敵わない。
「やれやれ、馬脚を露したね、阿良々木さん。全く、あなたに知識というものを少しでも期待してしまった僕が軽率だったな」
「お前、私の頭がすごく悪いと思っているでしょう」
「何故気付いたのっ!?」
「真顔で驚かれた!」
隠しているつもりだったらしい。
本当かよ。
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がむしろ(プロフ) - コメント失礼します!とても面白く、原作の化物語の通りに書かれていて、読んでいてとても楽しかったです! (2022年4月13日 23時) (レス) @page1 id: b2402acd1c (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - ヒマリンさん» ヒマリンさんコメントありがとうございます!わざわざこの作品を見つけてくださり、そう言ってもらえて恐悦至極です!これからも原作通りに進められるよう頑張ります!! (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
ヒマリン - 本当に化物語の通りでした。 すごいです。 (2021年1月7日 10時) (レス) id: 88fe224ab8 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - うたねこさん» うたねこさん初めまして、感想ありがとうございます!どちらも好きな方がいらっしゃるとは…!? 緩やかですが楽しみにしていただけているのなら光栄です(*'∀`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
うたねこ(プロフ) - はじめまして!物語シリーズもまふさんも好きなのでめっちゃ嬉しいです。お話もこれからすごく楽しみです! (2020年3月22日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月20日 4時