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その両手には__カッターナイフとホッチキスを始めに、様々な文房具が、握られていた。

先の尖ったHBの鉛筆、コンパス、三色ボールペン、シャープペンシル、アロンアルファ、輪ゴム、ゼムクリップ、目玉クリップ、油性マジック、安全ピン、万年筆、修正液、鋏、セロハンテープ、ソーイングセット、ペーパーナイフ、二等辺三角形の三角定規、三十センチ定規、分度器、液体のり、各種彫刻刀、絵の具、文鎮、墨汁。

…………。

将来、こいつと同じクラスだったという事実だけで、世間から謂われなき迫害を受けてしまうような予感がした。

個人的にはアロンアルファが一番デンジャラス。


「ち…違う違う。戦争はしない」

「しないの? なあんだ」


どこか残念そうな響きだった。

しかし広げた両腕は、まだ収めない。

文房具という名の凶器は、きらめいたままだ。


「じゃあ、何の用なの」

「ひょっとしたら、なんだけれど」


私は言った。


「お前の、力になれるかもしれないと、思って」

「力に?」


心底__

馬鹿にしたように、彼は、せせら笑った。

いや、怒ったのかもしれない。


「ふざけないで。安い同情は真っ平だと言ったはずだよ。あなたに何ができるっていうの。黙って、気を払わないでいてくれたらそれでいいの」

「…………」

「優しさも__敵対行為と看做すよ」


言って。

彼は一段、階段を昇った。

本気だろう。

躊躇しない性格であることは、先程のやり取りで、もう分かっている。嫌というほどに、だ。

だから。

だから私は何を言わず、ぐい、と、自分の唇の端を指に引っ掛けて、頬を伸ばして見せた。

右手の指で、右頬を、だ。

自然、右頬の内側が、晒される。


「__え?」


それを見て、さすがの相川も、驚いたようだった。ぽろぽろと、両手に持っていた文房具という名の凶器を、取り落とす。


「あなた__それって、どういう」






問われるまでもない。






そう。






血の味も、既にしない。






相川がホッチキスでつけた口の中の傷は、既に、跡形も無く、治ってしまっていた。

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がむしろ(プロフ) - コメント失礼します!とても面白く、原作の化物語の通りに書かれていて、読んでいてとても楽しかったです! (2022年4月13日 23時) (レス) @page1 id: b2402acd1c (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - ヒマリンさん» ヒマリンさんコメントありがとうございます!わざわざこの作品を見つけてくださり、そう言ってもらえて恐悦至極です!これからも原作通りに進められるよう頑張ります!! (2021年8月3日 19時) (レス) id: 75a262f2fa (このIDを非表示/違反報告)
ヒマリン - 本当に化物語の通りでした。 すごいです。 (2021年1月7日 10時) (レス) id: 88fe224ab8 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫(プロフ) - うたねこさん» うたねこさん初めまして、感想ありがとうございます!どちらも好きな方がいらっしゃるとは…!? 緩やかですが楽しみにしていただけているのなら光栄です(*'∀`*) (2020年3月22日 22時) (レス) id: 06fe930ba8 (このIDを非表示/違反報告)
うたねこ(プロフ) - はじめまして!物語シリーズもまふさんも好きなのでめっちゃ嬉しいです。お話もこれからすごく楽しみです! (2020年3月22日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:灰猫 | 作成日時:2020年3月20日 4時

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