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気付けばもう文化祭の1日前。

ミスターコンのリハーサルは極秘で空き教室で行われた。


と言うのも、公開で練習するとすごい人数が集まってきてしまうから、とのこと。



ミスターコンの説明が行われるこの教室にいるのは、3年生の岸先輩、岩橋先輩、2年の紫耀と神宮寺、1年生の永瀬くん、高橋くん、そして文化祭実行委員の数人と、私だ。
私は、出場者からは少し離れた実行委員寄りの席で話を聞いていた。

「で、自己紹介、特技披露が1日目の昼、ファッションショーが中夜祭、即興演劇が後夜祭前になります。今日は即興演技について話しますね」


そう言って実行委員の先輩が説明を始める。


本番では、最初に設定・状況説明がナレーションで入る。そして、カンペが前に出るので(後ろのスクリーンにも映し出される)、最初はその通り演技で読んでくれれば良い。そして演劇の最後に、その状況で女子がキュンとするような台詞をその場で考えて言う、というもの。
私には基本的にずっとカンペがあるらしい。
それを男女の会話、と、ライバル設定の男同士の会話で2シーンやるとのこと。


実際に岩橋先輩が指名され、実践してみる。


岩橋先輩の甘い言葉に、女子たちは大盛り上がりで、ミスターコン出場者のみんなは苦笑い。岸先輩だけ、手を叩いて大爆笑。
岩橋先輩は恥ずかしそうに席に戻り、笑っている岸先輩をぽかぽかと殴っていた。




説明とリハもそこそこに、ミスターコンの面々は解散。そして私も席を立つ。


「A戻ろう」


そう呼んだのは神宮寺で。紫耀は神宮寺の横で笑顔の一つもなく、私をちらりと見て、私の横をすっと通り過ぎた。

それがなんだか、ショックで。
私が何も出来ず立ち竦んでいると、神宮寺が、ほら行くぞ、なんて言って私の腕をとる。


きっと神宮寺は、分かっていたのだろう。
何気なく腕を引かないと、私が動き出せなくなっていたことを。



空き教室の多いこの辺の廊下は、生徒も滅多に通ることがなく、静かだ。
神宮寺に腕を引っ張られ、進めていた足が、そんな静けさに負けて、止まる。


「ねえ、神宮寺…」


彼に甘えてはいけない、分かっていたのに。


「苦しい…」


そう言った私を、神宮寺は、腕を引き寄せてぎゅっと抱きしめた。
強く、強く。




「俺にすればいいのに」




そう小さく呟いた、神宮寺の声も、私は、聞こえていないフリをした。




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あきんちょ - めちゃめちゃ良かったです!ぜひぜひ2nd season かいてほしいです! (2019年5月7日 23時) (レス) id: 5f9a7e6066 (このIDを非表示/違反報告)
タロウ - ののさん» コメントありがとうございます!わたしの処女作品から!嬉しいです!拙い文章ではありますが、楽しんでもらえれば幸いです!!作者登録はあまりするつもりはありません…フリーダムにやっていきたいなあ、なんて思っていて…これからもよろしくお願いします。 (2017年11月14日 19時) (レス) id: 9be0b69fd5 (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 「世界はそれを愛とよぶ」から拝見しています。タロウさんの作品に出会い、久しぶりに頻繁に占ツクにアクセスするようになりました!差し出がましい申出かとは存じますが、タロウさんは作者登録はなさらないのですか?これからも続き、楽しみにしています! (2017年11月14日 8時) (レス) id: dbdd18e851 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:タロウ | 作成日時:2017年11月12日 22時

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