17. ページ17
、
2人で家を出て歩く。日は徐々に短くなっていた。
「夏も終わるんかな〜」
なんて、空を見上げながら呑気なことを言う紫耀。その横顔が綺麗で、私は思わず見惚れてしまう。
「こうやって帰るのも、久しぶりちゃう？中2ぶり？」
そう、中学生の途中まで、私と紫耀はよく一緒に帰っていた。
それが途切れたのは、紫耀が彼女を作ってからだった。
それから、私たちは少しずつ距離ができていった。
一緒に帰ることをやめると、お互いの近況も驚くほど入ってこない。
もちろん会えば普通に喋るけど、紫耀は彼女の対応が大変そうで。
「送ってく、なんて珍しいこと言うからビックリしちゃった。どういう風の吹き回し？」
「いや、別に深い意味なんて無いねんけど。久しぶりに喋るいい機会やし」
そう言って紫耀はスエットの前ポケットに手を突っ込みながら歩く。
なんだか少しぎこちない2人の間を、ぬるい穏やかな風が吹く。それはまるで、神様が頑張れ、と私にエールを送っているようだった。
「…最近、どうなの」
私が出した言葉は、なんとも答えにくい質問で。
「んはっ、何その質問」
そう言って笑う紫耀。
「平野は、別に相変わらずです。Aは？転校生と仲良しってこっちのクラスまで噂が来てるで」
紫耀がそう言って、私は、思わず、え！？と、声を出してしまう。
そんな噂が。
「別に、席が近いから一緒にいるだけなんだけど…」
と、答えると、紫耀は、ふーん、と、視線を宙に彷徨わせた。
「Aが、男子と仲良くしとんの珍しいよな」
「そうかな」
「あんまり、周りと群れんイメージやったから…」
そう話す紫耀は、やっぱり相変わらず視線を前に向けてばかりだったから。
「寂しい？」
悪戯っぽく私が笑いかけると、紫耀は真面目な顔でこっちを向いた。
「…うん」
自分から仕掛けておいて、紫耀の返答に自分で困ってしまう。胸がドキドキと急速に鼓動を早める。
どうしよう、きっと私、いま、顔真っ赤だ。
素直になれない私は、紫耀の肩を遠ざけるように、ぐいっと押した。
「…アホ」
その一言が私の精一杯の強がりで。
すると紫耀はまた、いつものように、やめー、なんて言ってへらっと笑う。
その笑顔を間近で見ていると、自然とわたしも笑顔になっていて。
ああ、こんな風に笑いあって歩くのなんて、いつぶりだろう。
この時間が、いつまでも続けばいいのに。そう思った。
、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1236人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あきんちょ - めちゃめちゃ良かったです！ぜひぜひ2nd season かいてほしいです！ (2019年5月7日 23時) (
レス) id: 5f9a7e6066 (このIDを非表示/違反報告)
タロウ - ののさん» コメントありがとうございます！わたしの処女作品から！嬉しいです！拙い文章ではありますが、楽しんでもらえれば幸いです！！作者登録はあまりするつもりはありません…フリーダムにやっていきたいなあ、なんて思っていて…これからもよろしくお願いします。 (2017年11月14日 19時) (レス) id: 9be0b69fd5 (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 「世界はそれを愛とよぶ」から拝見しています。タロウさんの作品に出会い、久しぶりに頻繁に占ツクにアクセスするようになりました！差し出がましい申出かとは存じますが、タロウさんは作者登録はなさらないのですか？これからも続き、楽しみにしています！ (2017年11月14日 8時) (レス) id: dbdd18e851 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：タロウ | 作成日時：2017年11月12日 22時
