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身体を何度も重ねても付き合ってほしいと学生のよう告白された訳ではなかったから、この関係性をなんと呼ぶかは分からなかった。それでもファミレスでご飯を食べた日もあったし、ふらっと立ち寄った雑貨屋でお揃いのマグカップを買ったりした日もあった。「今までこんな家族みたいなあったかい時間を過ごしたことなくて……だから、凄く嬉しい」と照れながら言うラウール君が愛おしかった。
『意外。百戦錬磨かと思ってた……最初の夜のイメージがあったし』
「えへへ、背伸びしないとAさんに構ってもらえないかと思って頑張って大人ぶってたんだよね。まじであの時はめっちゃ緊張してたもん」
『ん〜、そんな風には見えなかったなぁ』
「僕、昔から取り繕うのは得意なんだよね」
『ふふ、なにそれ』
「実は…昔からパパに気に入らなかったら殴られたりしてて。少し前にそれが酷くなって、ママはそれに耐えかねて出て行っちゃって……それからはひとりぼっちでさ。自分の身を守るための術、なんだよね。反射的にでちゃう」
苦笑いした彼は、隣に歩く私の手を握り直した。そういえば、彼の広く白い背中にはいくつかのアザがあった。それを指で撫でた時に「汚いでしょ?」と悲しそうに呟かれたことがあった。誰かに加えられたものだとの予想は頭をよぎったけれど、また彼への好意がその質問を私の喉の奥に閉じ込めたままだった。
『そうなの……それで、だったんだ』
「あぁ、ごめん……なんか暗い話になっちゃった」
『ううん、気にしないで。私もラウール君のこともっと知りたいよ?』
「………Aちゃんは優しいね」
『そう、かな?でも同じこと、言ってくれたことあったじゃない?嬉しかったもん、あれ』
「…………」
『ん?どうしたの?っ、うわ、!』
急に足を止めた彼の腕に引かれて、街中の雑踏の中で抱きしめられていることに気づいた。
『ね、!み、みんな……見てるよ……?』
「いい。見せつけたい。………今回ばかりは、嫌だから」
『ん?え、なに、?』
「なんだか………Aちゃんが僕なんかに見つからなかったら良かったのにって思ったりするんだ。そしたら僕の最低な人生に巻き込んだりしなかったのにって、悲しくなる」
私の首筋に顔を埋めるように、大きな身体に包み込まれる。それなのにまるで小さな子供が泣くのを我慢して、しがみつくように感じた。
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kae(プロフ) - meeeeenさん» meeeeen様、いつも優しいお言葉をかけてくださってありがとうございます😢架空とはいえ、ありそうだなぁとお話の世界に入っていただけて嬉しいです🙏こちらこそ読んでくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いします😭 (2023年4月4日 18時) (レス) @page49 id: 2742f5c4f0 (このIDを非表示/違反報告)
meeeeen(プロフ) - 最後まで楽しく拝見させていただきました。勿論、彼らは素敵な人でそんなことはしないであろう…でも、想像できます。素敵なお話ありがとうございました!! (2023年4月4日 11時) (レス) @page50 id: f8e174bf81 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - ゆきさん» ゆき様〜!いつも温かいコメありがとうございます😭あまり反応が無くて悲しくなってたんですが、一気に全部吹き飛びました😂これからも頑張れます…!ほんとにほんとに凄く嬉しいです!!これからも宜しくお願いします♡ (2023年4月2日 10時) (レス) id: 2742f5c4f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - kae様、いつも刺さりまくるお話ありがとうございます! ダークなスノさん最高でした🥹 またお話たのしみにしておりすます! (2023年4月2日 8時) (レス) @page50 id: 6c8365d1f8 (このIDを非表示/違反報告)
kae(プロフ) - まーたんさん» まーたん様、コメありがとうございます😭のんびり更新とはなりますが今後ともお付き合いください💦 (2023年1月4日 15時) (レス) id: 0d3898dd38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kae | 作成日時:2022年12月5日 0時