【募集企画】IDOL in Grand Cross【本編～日常編】 (ページ9)

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特訓/ユイ・クロードページ9

半面がガラス張りになったレッスンスタジオのフローリングに、ステップを踏む軽快な音が響く。学業優先で後れを取っていた分を取り戻そうと、ダンスの特訓を行っていたユイとフレディの動きを、同じ事務所に所属するヴォイドが見かけて声をかけた。

「Bメロからサビに入る前のステップ、合わせようとする動きが硬すぎて何だか心地ないのが気になるにゃ……」

声に驚き、入り口を見るユイとは反し、フレディはまるで知っていたかのように動じない。

「ルー？！いつからそこにいたの」
「ユイ、良い反応だにゃ！二人が真剣に踊っていたのを、ずっと見ていたにゃ♪相変わらず、フレディは動じにゃいのね」
「いえ…別に」

タオルを首に掛け、淡々と水分補給をするフレディに、ヴォイドは苦笑いを見せた。
音楽プレイヤーの前に腰を落とし、並ぶ二人に視線を合わせるヴォイド。

「見てやるから、もう一度…今度は楽しく踊るにゃ！」

彼の申し出に、顔を見合わせるユイとフレディ。
ヴォイドのダンスセンスは高く、ユイは彼に体の動かし方について指導してもらっていた程だ。

「え…いいの？！ルー」
「ぜひ。お願い……します」
「必死のダンスは見ていて堅苦しいにゃ。とりあえず肩の力を抜いて、好きに踊ってみるにゃ」

そう言うと、ヴォイドは音楽プレイヤーを再生させた。
互いに視線を送り、小さく頷くユイとフレディ。
イントロが流れると同時に、それまで疲れをにじませていた表情が、すっと解けて消えた。
楽しい物語を読み上げるような歌詞の意味を、全身を使って表現するように、指先までが軽快に踊り出す。

ヴォイドに流され、自由に踊る二人のステップは
音が、歌が、大好きだと―――教えてくれる。

見ていたヴォイドも思わず首を揺らす…

(楽しそうな二人を見ていたら、心が疼くにゃ♪)

立ち上がったヴォイドが、ステップを踏む。
どこで覚えたのか、アファームのもう一人のメンバーのパートを一緒になって踊り出した。
伸びやかでしなやかなヴォイドのダンスは、流石の技術力。だが、それ以上に魅力的なのは、楽し気な表情―――

「ユイのリズム感も、フレディの細やかな動きも、とてもいいにゃ！二人とも、凄く楽しそうにゃ！」

頭で考えるよりも、感情が手足を動かしていく。

―――やっぱり、音楽は楽しい。