キミがいるから/アリス・イービス ページ16
窓の外が薄っすらと青を射す。
つい先刻までの怒涛が嘘のような静けさを取り戻した救急室のパソコンの前で、アリスは大きく両腕を伸ばした。
「休憩戻りましたぁ〜」
未だ眠そうな目を擦りながら、同じ当直をしていた看護師が戻ってきた。
珈琲を片手に画面を確認するアリスは、振り向きニコリと笑顔を向ける。
「おはようございます、休めました?」
「へへっ、おかげさまで!」
彼女は隣のパソコン前に椅子を引き寄せると、カルテを開く。
「あれ…記録終わってる?」
「ん、やっといた。間違いないかだけ確認お願いしていい?」
「有難うございます!流石アリスさん、仕事速いし記録見てるだけでアセスメントの勉強になります…あ、やっぱりあの呼吸音、そうだったんですね―――」
電子カルテを繰りながら、ぶつぶつと独り言を言い始める後輩に、微笑を返すアリス。
大学卒業後救急センターに配属され、やっと今年念願の専門看護師の資格を得たが、その代償は大きかった。資格勉強にかかりきりになっていた為Grand Crossの王者の座を逃したのだ。アイドルと看護師…両立させることが容易でない事は初めからわかっていたが、どうしてもやり遂げたいとの強い決意を持っていたというのに。
―――その結果が、これだ。
コスモスライク(みんな)にも、迷惑かけてしまった。
「アリスさん、仮眠行きますか?救急コール鳴ったら呼びますよ〜」
「私はいいわ、仕事溜まっちゃってるし―――」
「リソース(専門看護師)の方ですか?大変ですね……」
後輩看護師は、アリスのパソコン画面を覗き込む。
救急センターの物品配置の見直しや患者の集計、システムの改善についてなど、やるべきことは山ほどある。夜勤明けの午後からはアリスが専属モデルを務める“ティセア”での撮影の仕事が待っている…Grand Crossに向けて、知名度を上げるのは必要不可欠だ。
今は、仮眠をとる時間も惜しい。
「ふふ!好きでやってるんだもの、大変じゃないよ」
「またまた〜アリスさん“呼ぶ人”ですもん。当直一緒になる時、絶対忙しくなるんだから〜」
「勉強になって良いでしょ?今日の当直医がDrクロードで助かったわね……若い先生だったら今頃やっと病棟へ申し送りしてた頃かもよ?」
「ですよね〜。仮眠取れなくなるところでしたよ〜」
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流離いのsecret(プロフ) - kohaku様>>執筆お疲れ様です〜!素敵なお話の三本立て!しかも最後にうちの子〜〜!!!最高ですありがとうございます! (2021年6月30日 22時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流離いのsecret x他3人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年6月30日 16時