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「リビングでレポート仕上げているから。何かあったら呼んで?」
いつもよりワントーン低めのユイの声は、笑っていない。機嫌が悪い事は、容易に想像できた。
「え、ユイ―――。俺は大丈夫だから、レポートあるなら帰っても……」
(迷惑をかけたくないから、風邪の事を言わなかったのに―――)
「あー君は、僕が傍に居ると邪魔?―――…僕は、あー君が辛い時くらい近くに居たいって、思うのに」
―――熱で、思考に靄が掛かる。
チャロのぼんやりとした頭は考える事を放棄して、気が付けばベッドから立ち上がり、ドアの前に立つ彼を両手で抱きしめていた。
「んなこと言ってると、何するか分からないぞ?俺―――」
武道の心得があるチャロ。本気になればユイくらい簡単に押し倒して……
「舐めんなよ?」
ふにっ!
「わっっ?!」
猫耳を、両手でつかまれる。
ふわふわとした猫耳の後ろを指で擽られると、熱も相まって体の力が抜ける。
全身の脱力感と共に、張り詰めていた気も抜かれたようだ・・・
普段なら、恥ずかしさでまともに言えないような言葉も、さらりと口から出てしまう。
まるで、自分の身体じゃないようだ。
「やっぱり……ユイに、居て欲しい」
「―――うん。今日はずっとここにいるから…早く風邪治そうね?あー君」
先程よりもずっと、甘い声が耳元で囁きかける。どうやら彼の機嫌は直った様子。
生き物は、弱った時ほど心細くなるようで、すっかり気の抜かれたチャロは、おとなしくベッドに蹲った。隣の部屋から時々聞こえるタイピング音や足音が、ユイが近くにいる事を教えてくれる。
「ありがとう…ユイ」
―――こんな風邪、直ぐに治すから。明日はお弁当、作るからな……
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チャロさん、サシャさん、お借りいたしました。
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流離いのsecret(プロフ) - kohaku様>>執筆お疲れ様です〜!素敵なお話の三本立て!しかも最後にうちの子〜〜!!!最高ですありがとうございます! (2021年6月30日 22時) (レス) id: af1699faf6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流離いのsecret x他3人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年6月30日 16時