【歌い手】Congratulations on your graduation【大型コラボ】

【3/10】忘れ物 (後編)@じゃすたうぇい ページ8

既に下がり切った気力に溜息を吐きながら、折角だからとアルバムを見てみる事にする。

心の物置に埋れていた名前やら思い出やらが、アルバムによってずんずん引き出されていく。

忘れかけていた思い出や、時々ふと思い出すもの。
懐かしさと共に、ぽっかり穴の空いたような胸の空虚感が身体を占める。







ーーーー……思い出の塊から落ちたのは、一枚の紙切れだった。







「ーーーーん？

あれ、これ……」





ひと昔前に流行ったキャラクターのメモ用紙に、鉛筆かシャープペンシルかで書かれた誰かの電話番号。
記憶に引っかかる筆跡。


それが挟まっていたアルバムのページと用心深く見比べて、それが誰のものであるかが即座に判明した。








ーーーーぐるたみん。



喧嘩別れしてしまった、彼の名。

少し殴り書き君の狭い字は、紛れもない彼の筆跡だった。







「……ぐるの、電話番号？ 」



どこかで見覚えのあるような数列は、彼の電話番号だろうか。



「……ぐる、」


……二年も前のものだ。
掛けた所で、通じるかさえも怪しいのに。






.








無意識に、受話器を手に取っていた。




自分でも、限りなく突飛で馬鹿な行動だと思う。
しかし、それはきっと、心の奥底に佇んでいた後悔の後押し。

よりを戻したいとかじゃなく、置いて来てしまった応えを只々知りたかった。
彼は、私の事を覚えているのか。
私をまだ、怒っているのか。


まるで何回もその番号を押していたかのように、慣れた手つきでボタンを滑る指。
コールが始まって少し経って、受話器を取る物音がした。

いつか過ごしたような、懐かしい感情。
低く、愛しい声が聞こえた。









『……もしもし。

ーーーー……A？ 』






『うん、そう。
もしかして、ずっと電話帳に登録しててくれたの？
……ありがとう、ぐる』




『……ん。元気？』



『うん、元気だよ。
そっちはどう？ ちゃんとやってる？ 』




『うん、やってる』



『へえ、そうなんだ』




『……でさ、A。




あの、さ』




『うん』









『ーーーー……今日って、空いてますか？ 』




＊＊＊

皆さん、御卒業おめでとうございます。
じゃすたうぇいと申します。
今回、少し視点を変えた話にしてみました。
不出来なものですいません。


遠い春に忘れてきてしまった、恋。


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