【歌い手】Congratulations on your graduation【大型コラボ】

【3/18】枝垂桜の木の下で@睦月来歌 ページ21

満開の桜のトンネルを潜り抜け、私はこの学校を卒業する。

待ち遠しく思っていたこの日が来た。

そう思うと、途端に頬が熱くなってくる。


三年間、待ち続けたんだ。
三年間、磨き続けてきたんだ。


この気持ちを言葉にしなくてどうする、私。


他の桜の木とは少し違う、垂れ下がった枝を珍しそうに眺める君は、いつもと同じ。


眼鏡についてしまった桜を払う仕草なんかも、いつもと変わらず綺麗で。


「…まおさん！」

「ふぇ！？」


後ろから抱きつくと、驚いたように叫んだ。


「…ふふ、変な声」

「もう、急に抱きつくなっつの！Aも一応女の子なんだから…」


…女の子、か。
いつになったらこの人は私を女として見てくれるんだろう。


「来月からは大学生です！もう子どもじゃないもん！」

「実感湧かないなー…初めて会った時はもうちょっと小さくなかった？…あ、今もか…うん、どんまい」

「どこ見て言ってるんですかこの変態…っ」


ほんと、変わらないな。

…でも、この関係は変えたい。
このままは、嫌なの。


「…あのね、まおさん」

「ん？」


緊張、するなぁ。
三年間の気持ちを、言葉にするのは。


「私ね、まおさんのことが」


「え…？」


怖い。

でも、伝えなきゃ。

私の気持ちをーーーー。


「好き、なの」


固く、目を瞑る。




「…っふは、あはははは！」

「へ？」

「何言い出すのかと思ったら…まさか先越されちゃうなんて…！」




先を、越された？


「えっと、まおさん」

「好きだよ」


…はい？


「三年間から、俺はAしか見てないんだけどなぁ…」


そんなにわかりずらかった？なんて苦笑いするまおさんに、思わず口を開けてしまう。


「Aじゃなかったら俺、抱きつかれるの嫌だもん。他の子だったらたぶんめっちゃ冷たい目で見てる。
…そんなに驚く？」

「むしろ驚かない方がおかしいと思いますけど！？」


でも。
嬉しい、かな。

私の一方的な片想いだと思ってたから。


「…俺で、いいんだよね？」

「何急に弱気になってるんですか。まおさんだから、ですよ？」

「えへへ、ちょっと恥ずかしいな」


恥ずかしいのはこっちだ。

むっとした顔をしていると、ふいに視界が彼に染まった。

つまり、彼しか見えないということで。
つまり、そのくらい近いということで。


「…好きだよ、A」


重なった唇。
それは優しくて、温かくて。

私たちを祝福するかのように、枝垂桜が枝を揺らした。


*

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