【歌い手】Congratulations on your graduation【大型コラボ】

【3/13】百度目の正直＠モノクロメロディー。 ページ13

式典中に溢れ出てきた涙。
最後に歌わないといけなかった校歌も、まともに歌えなかった。
ま、ほとんどの女子がそうだったけど。


記念撮影やら挨拶やらで全員がグラウンドに出ているであろう中
１人、下駄箱に体育座りでうずくまっていた。

簀子(すのこ)にしゃがみこむこと数十分。



――カタ



誰か来た。
ゆっくり足音が近づいて、何やら目の前で止まる。


「…行かないの?」

『そっちこそ』

「俺は行かない」


声でわかる。だけど顔をあげてわざわざ相手を見た。


りょーくん


ブレザーの前を開けて、ネクタイも首元のボタンも緩めた彼が、怠そうに
私の反対側の下駄箱に背中を預けて座っていた。

カーディガンの第２ボタンはまだあるようだ。

…別にほしくない
ボタンだけもらうくらいなら、いらない。


「ボタン、受け取ってくれない」
『いらない』
「後輩が追いかけてくるんだよ」
『ちぎってどっか捨てちゃえば』

外を見ていた彼の目が一瞬見開いて、すぐ後に舌打ちした。


「泣いてんじゃねぇよ」

無表情にも見える顔が、私を見た。

「泣き顔ひでぇ」
『うるさいな、見るな』


「見せるな」


最低

その辺の男子の中じゃ、別格にかっこいいと思ってたのに
ちょっと好きだったのに


また顔を伏せようとすると、
また舌打ちされた。


「そもそもお前、スカート抑えないで座ってるから中丸見えなんだよ」
『ひゃっ///』
「顔」
『っ!!』

なんなんだまったく
いい加減ほっといてくれ、そう言おうとした時だった。




「見えないとこ来い」




最初は、何を言ってるのかわからなかった。
どっか行けって意味かと思ったら、“来い”と言われている。

そうやってりょーくんの方を見ると、
彼が、こっちに手を伸ばしていて。

ゆっくり、でもしっかりそれをつかんだ。


力強く引き寄せられる。

りょーくんの足の間に女の子座りで収まって、泣き顔が見えないように彼の肩に顔をうずめた。



優しく肩を抱かれる。


『ね、え』
「ん?」
『ボタンじゃ、なく、て、』
「…うん」

『りょーくんが、ほしい』


思いのほかあったかい彼の中。


耳元で小さく聞こえた声


．






．






．






．





――――好き

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