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一連の会話を聞き届けると、意図せず置いてけぼりにされていた陽奈が「もー、みんなこんな大事な日に喧嘩しないの!」と見かねた様子で割り込んできた。
「確かに高校は別々になっちゃうけど……でも、今まで私達が仲良くしてきたことは変わらないでしょ?」
「……確かに、それはそうですね」
今こうして六人だけで写真を撮ろうとしているのも、彼らの交流が幼稚園時代から実に十数年続いてきたという事実があってのことだ。先程は淡白な態度を示した紫乃もそれについては同じ認識であるようで、陽奈の問いかけに同意を示す。同様に雪欺も小さく頷いた。
「やっぱりさ、私にとってはみんなが本当に大切なんだ。だからさ……離れ離れになっても、ずっと仲良くしようね」
言いながら、陽奈は照れ臭そうに笑う。常日頃から見せているものとは少し異なり、その笑顔はどこか憂いを帯びていた。
彼女らしからぬその言葉に、伊織は「当たり前やろ!」と陽奈の肩をばしんと叩いた。
「そう、ですわね……きっとまた会えますわよね!」
「みんな、これからもよろしゅうな〜」
伊織のボディタッチの力強さに思わずよろめいた陽奈だったが、麻知と天音も彼女に共感を示した。目をぱちくりとさせながら一連のやり取りを眺めていた紫乃と雪欺も、やがて「まぁ、実際忙しくなるかどうかは分かりませんしね」「高校でもお互いどうにかやっていこうな」と肯定的な態度を見せる。
陽奈はそんな彼らの反応を見て満足げに微笑むと、「ほら、みんなそろそろ写真撮るよ!お父さんお願〜い!」と声を張り上げた。
撮影役に駆り出されたまま待機させられていた陽斗は娘の呼びかけに応じ、ファインダーを覗き込む。
「待ってました、それじゃあ撮るよ〜!はい、チー……」
カメラを構えながら高らかに撮影合図を告げる陽斗。互いに向き合って会話していた子供たちは、その言葉を耳にすると慌てて横並びの隊形を作り始めた。
学校行事の度に、肩を並べて同じ写真に収まってきた彼ら。だが、それも義務教育と共に今日で区切りとなる。
これから先も、こうして六人で集まって写真を撮ることがあるかもしれない。それとも、これが最後になってしまうだろうか。
「……ズ!」
――かしゃり。
様々な思いが交錯する中、そんな声と共にシャッターが切られた。
第一話『シャッター』完
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作者名:春乃四葉 | 作成日時:2024年3月6日 19時